秋華賞のメンバー表を見ながら、ある厩舎スタッフがこうつぶやいた。
「今年の
秋華賞って、春から体重が大きく増えている馬があまりいないんだよな。成長度っていう意味では、どうなんだろう?」
言われてみれば確かにそうだ。東西の
トライアル好走組で、春から10キロ以上増えていたのは
紫苑S2着の
フェアリーポルカのみ。過去を振り返ると、3冠牝馬
アーモンドアイ、
ジェンティルドンナ、
アパパネなどは、ひと夏越して体を大幅に増やした。それを踏まえると、気になるデータではある。
馬の成長曲線と体重の増加は比例するのだろうか? ひと夏越して20キロほど体が増えたという
クロノジェネシスの
斉藤崇史調教師に疑問をぶつけてみた。
「一概には言えないと思いますよ。増えたものが筋肉なのか、内臓脂肪なのか、その中身によって違ってきますから。体が増えていないからといって、成長していないとは言えませんし、その逆もしかりです」
もっとも
クロノジェネシスの場合は「春より体がしっかりしてきた」ことによる大幅プラス。
オークス3着以来のぶっつけ参戦でも、怖い一頭なのは間違いないだろう。
では、数字に表れない成長を遂げている馬は?記者のアンテナに引っ掛かったのは、栗東で調整中の関東馬
シャドウディーヴァだ。「天高く馬肥ゆる秋」という言葉を体現するように「以前はカイバを残すことが少なくなかったんですが、ここにきてぺロリと食べてくれるようになったんです。背が伸びて、体も大きく見せていますよ」と小原助手。
栗東滞在により、この後の輸送の不安が少なく、なおかつカイバをしっかり食べられていることで、「以前より攻めを強化できているのはいい材料ですね」。9日の最終追い切り後の計量で476キロ。数字自体は前回(
ローズS9着=472キロ)と大きく変わらなくても、中身は別物だ。
「いくらか食が細いなという状態で使っていた春でも、あれだけ走ってくれましたから、今の状態でどこまでやれるか楽しみです」(小原助手)
前走はスタートが良過ぎてハミをかんでしまう誤算があったが、「ゲートを出るようになったのはトモが成長している証拠でしょう」と敗戦の中にも収穫があった様子。
「食欲の秋」が「実りの秋」になることを願ってやまない、食いしん坊記者なのである。
(栗東の馼王野郎・西谷哲生)
東京スポーツ