逃げた
ダイワキャグニーが先頭のまま最後の直線に入った。
直後につけていた
津村明秀の
カレンブーケドールが外に持ち出しながらスパートをかける。
道中ずっと引っ張り加減の抜群の手応えで進んでいたオイシン・マーフィーの
スワーヴリチャードは、いったん
カレンの外に出すかに見えたが、すぐさま
カレンブーケドールの内に入った。
「いくつかオプションがあった。が、
カレンブーケドールの内側にスペースがあったので、最短距離を行くことにした。逃げていた馬が下がってくるのはわかっていました」とマーフィー。
ラスト400m地点でも、まだ
ダイワキャグニーが先頭だ。2馬身ほど後ろで、内の
スワーヴリチャードと外の
カレンブーケドールが馬体を併せて叩き合う。一時は
カレンが前に出かけたが、ラスト300m地点で、スワーヴが
ダイワの内に進路を取ってスパートすると同時に、スワーヴが前に出た。
「ラスト200mで勝てると思った。直線で競り合った
カレンブーケドールは、ぼくの身元引受人の国枝(栄)調教師の管理馬。ぼくが53キロまで落とすことができたら、そっちに乗っていたかもしれない」
そう振り返ったマーフィーの右鞭に応え、
スワーヴリチャードが
カレンを3/4馬身抑え、先頭でゴールを駆け抜けた。
スワーヴは、直線入口と、ラスト200m地点で
ダイワをかわすとき、内か外の進路を選ぶチャンスがあった。その両方で、マーフィーは内を選択した。
「自分の前の騎手がこのまままっすぐ行くのか。その馬はまっすぐ行きたがっているのか。そして、その騎手は鞭をどちらに持っているのか。一瞬の判断ですが、そうしたことをもとに進路を決めています」
ラスト200mで、
ダイワの
石橋脩は、鞭を左に持っていた。つまり、外へ持ち出す(あるいは内に刺さるのを防ぐ)動きをしていたのだ。
「
ジャパンカップは世界有数のレース。夢が叶いました」
アイルランド出身の若き名手が、鮮やかな手綱さばきで、嬉しい
JRA・GI初制覇を遂げた。
(文:島田明宏)