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仏で収穫 キセキの経験/トレセン発秘話

東京スポーツ
  • 2019年12月20日(金) 18時00分
 パリロンシャンのパドックでフィエールマンの姿を見たときに「今日はないな」と思った。

 明らかに馬体が薄く、すでに馬が疲れているように感じたからだ。山村記者によれば、「あのときはテンションが高くなり、折り合いも欠いてしまった。体も細く見えたね。馬場うんぬんの問題ではなかったと思う」と手塚調教師は凱旋門賞を振り返っているという。

 ゴール直後に止まってしまったほど、疲労困ぱいだったフィエールマンが2か月半程度の間隔で復活するとは思っていないが、再び山村記者によると「重心の低い走りが戻っているらしいよ」と。1週前追い切りではセダブリランテスにアオられていたが、同馬はディセンバーSを楽勝。フィエールマンの評価を上げる記者が出てくるかもしれない。

 一方、パドックに登場したキセキの雰囲気はニューマーケット組よりも良好に見えたのだが…。それ以降が良くなかった。返し馬に入ると一気にひっかかり、ものすごい勢いで向正面まで走ってしまったのだ。「あの日の馬場は相当にタフな状態だったからね。あれで“終わってしまった”と思ったのは確か」と担当の清山助手は振り返る。

 “戦う前に終わっていた”という意味では、フィエールマンと同じでも、その意味合いが少し違うことは認識しておきたい。日本で結果を出していたころに戻そうとするフィエールマンに対し、キセキは結果を出せなかったフランスでの経験を今回の一戦にフィードバックしようとしている。

シャンティイの砂は深いでしょ?歩いているだけでもトレーニングになるし、それがキセキの弱かった部分を鍛えてくれた。体幹がしっかりしてきたと感じるよ」(清山助手)

 ここまでは、どの新聞も報じていること。だからこそ、記者は次の部分にこそ注目した。

「最後にしっかりと伸び切るために、まずは体を起こしておく。まあ、当たり前の理屈ではあるんだけど、以前から意識的に上体を起こした乗り方を心がけてきた。速いところよりも、キャンターのほうが大変なんだよ。ハミを軽くかませた状態で、キセキのパワーをコントロールしなくちゃいけないんだからね」

「頭の位置が低い走りこそベスト」という“刷り込み”がある日本では「見た目がイマイチ」となってしまうが、欧州のトップジョッキーたちは、当たり前のようにする乗り方だ。

 キセキのフォワ賞(3着)後に、友道キュウ舎の大江助手が「レースであそこまで体を起こして走る姿を初めて見た。負けはしたけど、スミヨンはああいうところをしっかりとやるんだ。さすがだなと思いましたよ」と口にしていたことを清山助手に振ると…。

「俺もそう思った。すごいなって。タフな馬場で密集した競馬をしている彼らは、いかに脚をためるかを考えている。でも、それは後ろにいればいいって簡単な話じゃなくて、しっかりと位置を取ったうえで我慢させる。その技術だよね。そのために必要な乗り方が“体を起こす”こと。今回の遠征はすごく意味があったと思うし、その乗り方が世界で一番上手な騎手はムーア。中山はパワーが必要ってことも含め、すべてが今回の有馬に生きてくると思わない?」

 今週火曜の坂路で見たキセキは、上体を起こしながら軽くハミを取り、ウイークポイントである“ハミをたぐる”ような面も見せない、ギリギリのところでコントロールが利いた素晴らしい雰囲気だった。

「この調教を追い切り後の金曜あたりにもできれば面白いと思う」と、手応えを感じている清山助手は「あとは一瞬の脚で勝負する馬じゃないので、4コーナーでアーモンドアイと2馬身は欲しいかな」と結んだ。これは大仕事をする可能性まであるのでは?フランス帯同記者としてキセキを応援したい気持ちが日に日に強まっている。

(栗東の本紙野郎・松浪大樹)

東京スポーツ

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