アーモンドアイですら惨敗を喫してしまうのが競馬。ならば第36回
ホープフルSで同じく断然の1番人気が予想される
コントレイル(牡2・矢作)もまた楽観はできないのか…。「超出世レース」東京スポーツ杯2歳Sでレコード走破&5馬身差圧勝を決めた、あの衝撃の瞬間から、密着マークを続けてきた松浪大樹記者が、その“ヤバさ”を余すところなく、お伝えする。
好走は間違いなく、勝つチャンスもかなり高い。戦前からそう思ってはいた。しかし、1分44秒5のレコードタイムをマークして2着の
アルジャンナに5馬身差。3着の
ラインベックはさらに4馬身も後方に追いやってしまうとは…。
無傷の3連勝で
朝日杯FSを制した
サリオスのキャリアも、なかなか衝撃的。しかし、
コントレイルがこの
ホープフルSもぶっこ抜くようなら「
最優秀2歳牡馬」の行方はかなり難しいものになりそうだ。その場合の判断基準にしたい、いや、すべきと考えているのが前述した結果に終わった東京スポーツ杯2歳S。これほどまでのパフォーマンスを2歳戦で見たのはいつ以来のことだろう――。あの一戦以来、
コントレイルのささいなしぐさも見逃さないように気を配っている。
「普段はすごくおとなしいんですよ。輸送でイレ込むようなこともなかったし、馬体重もデビュー戦と変わりませんでしたからね」とは担当する金羅助手。
確かに馬房にいる
コントレイルは無駄なことをせず、ただひたすら外の景色を眺めている感じだったのだが、実はこれ自体に違和感。逍遥馬道などを歩いているときは、かなりの頻度でチャカつき、時には跳ね回っている。東スポ杯のレース前には鞍上のムーアを振り落としてしまったくらい。
サンデーサイレンス系らしい気性の難しさがあるのでは? 勝手にそう思っていたのだが…。
「確かにそういうところもありますね(苦笑)。でも、オンとオフのメリハリがついているわけですし、元気があっていいんじゃないかと思っています」(金羅助手)
しかし、その跳ね回っている姿がまるでマイナスには見えず、むしろ運動神経の高さを感じてしまう。
ディープインパクト産駒らしい、素晴らしいバネ――。実際、
コントレイルの話を振った関係者の何人かも「びっくりするくらいの柔らかい動きをしている」と評価していた。まさに「ザ・
ディープインパクト」といったイメージだ。
「兄姉もウチの厩舎にいて、僕が担当したこともあるんですけど、この血統はどちらかというと母系を出してくるイメージを持っていたんです。(兄姉には)乗っていて、ダート向きの硬さを感じたのがその理由なんですが、この馬はそれとは正反対。ものすごいバネを持っていて、いかにも芝で切れそうな乗り味なんです」という金羅助手に
コントレイルのすごさを一つ挙げてもらうと、「自分が思っているよりも速い時計で走ってしまうこと」と即答した。
なんでも、東スポ杯当週にマークした坂路4ハロン51.9-12.4秒は「自分的には全体が54秒くらいで、ラストだけサッと伸ばすイメージ」だったらしく、その通りの追い切りが当時はできたと思っていたようなのだが、マークした数字は前述のもの。「イメージと2秒も違うって、ちょっとヤバイですよね」。乗り手の感じ方とのギャップこそが、
コントレイルのすごさと言えるのかもしれない。
「マイラーかと思えるくらいのスピードを持っている馬ですが、普段の扱いやすさと競馬でのセンスの高さから、距離はこなせると思っています。ただ、これまではワンターンの競馬しかしていないじゃないですか。頭数も増えますし、なによりも気になるのは中山の芝状態。過去の2戦はどちらもパンパンの良馬場で速い上がりをマークできる状況でしたから。開催最終週でタフな芝状態になっても前走のように走れるか? クリアしなきゃいけない課題は少なくないですよ」
慎重なコメントも一応は並べた金羅助手だが、隠しきれない手応えは自然に表情に出ていた。
有馬記念で有終の美を飾った
リスグラシューのバトンを引き継ぎ、矢作厩舎の新たなエースへ――。今回の結果次第とはいえ、この
コントレイルに「
最優秀2歳牡馬」の一票を投じたい気持ちは日に日に強くなっている。
(松浪大樹)
東京スポーツ