3か月後の
皐月賞と同舞台でありながら、
京成杯が“隙間重賞”の域を出ないのには理由がある。
グレード制導入の86年以降の歴代の優勝馬でクラシックホースに輝いたのは
エイシンフラッシュ(10年
日本ダービー)ただ一頭。この低迷は厳冬期が影響するのだろう。
早々にクラシックを意識する馬にとって、1月はオフシーズン。非出世レースというより、素材が揃わぬ状況が優勝馬の飛躍を阻んでいる。
ホープフルSがGIに昇格した現在、この傾向に拍車はかかろう。
兆候は、すでに示されている。これまでの優勝馬は最短でも2戦のキャリアを要したが、昨年は新馬Vから直行した
ラストドラフトがあっさり戴冠。夢(クラシック)より現実(賞金)を選択した戦いなら、実績よりも買うべきは伸びシロか。
その意味で、今年は5中・新馬戦(芝内1800メートル)を勝ち上がってきた
キズナ産駒
クリスタルブラックに注目する。特筆すべきは豪快な勝ちっぷり。ゲートの反応がひと息で、道中は5ハロン通過65秒2のスローペースを10番手から運ぶ形だったが…。圧巻はペースが上がった残り3ハロンから。大外を回って上位進出、直線も内にササるのを矯正する程度で、ラスト2ハロン11秒5→11秒5の上がり勝負を制したのだからモノが違った。
「速い時計は直前の2本だけ。それでも時計にならないところでは、しっかり乗っていたし、これでも勝負になると思って送り出した。フィジカル的には、あまりいじめていないけど、とにかく心臓とかモノがいいよね」
高橋文雅調教師が、この一族を手掛けるのは同馬で3頭目だが、当歳時からスケールを感じたと言葉を続ける。
「やっぱり血統かな。走りっぷりの良さに加えて回転力もある。走る姿は父の
キズナに本当に良く似ているよね。いい意味でゆったり感というか遊びがあるし、距離の幅もありそう。今後の物差しにするには
京成杯は適所と思うんだけど」
前走後に放牧を挟んでおり、最終的な出否は最終追いをチェックしてからになりそうだが…。先行馬揃いの組み合わせからも、その“伸びシロ”が今年も怖い。
(美浦の宴会野郎・山村隆司)
東京スポーツ