今年から
ディープインパクトの名がつけられた、第57回
弥生賞ディープインパクト記念のゲートが開いた。
出走馬11頭のなかで唯一のディープ産駒である1枠1番の
サトノフラッグは、他馬と横並びのスタートを切った。鞍上の
武豊は、正面スタンド前で少しずつ
サトノフラッグを馬場の傷みの少ない外へと誘導して行く。1コーナーに入るときには、7枠8番の
ワーケア、9番
アラタの直後につけていた。
「初めて跨ったのですが、馬上からの眺めが
ディープインパクトに似ていました。走りそうだな、と」と武。
向正面で馬群はやや縦長になった。
サトノフラッグは後方4番手を、引っ張り気味の手応えで進んでいる。1000m通過は1分1秒1。重馬場であることを考えると、平均ペースといったところか。
サトノフラッグと先頭との差は10馬身ほど。3コーナーを回りながら馬群は凝縮されていく。
サトノフラッグは外からグーンと差を詰め、ラスト600m地点では先頭を5馬身ほどの射程にとらえていた。
「3コーナーから馬が自分から上がって行った。お父さんと同じような感じでしたね。思い出しました」と武。
持ったままで進出した
サトノフラッグは、
オーソリティの外に併せて4コーナーを回り、直線へ。
手前を左に替えると、さらに四肢の回転を速め、先頭に立った。
ラスト200mを切ってから、武の左ステッキが軽く3発入ったが、最後の3、4完歩は流すようにして、2着を1馬身3/4突き放してゴールを駆け抜けた。
「
ディープインパクトの産駒でこういうレースに出られるのは、あと何回もないので、勝ちたいと思っていました。良馬場なら、もっといいと思います。非常に楽しみな馬ですね」
歴代最多の
弥生賞8勝目、同時に、自身の34年連続重賞制覇という偉業を達成した武は、そう話した。終始馬場の傷んだ内を避けて走らせ、なおかつ相手となる
ワーケアをマークしながらレースをするという、さすがの騎乗だった。
3連勝で重賞初制覇を果たした
サトノフラッグは、一躍、クラシックの有力候補となった。
2着に敗れた1番人気の
ワーケアは、3、4コーナーで前が壁になり、やや窮屈になる場面があったものの、ラスト400mからは目一杯追うことができていた。
2、3着が、昨年の
ホープフルステークスの3、5着馬という結果からも、
サトノフラッグの実力は、額面どおりに受け取っていいだろう。
(文:島田明宏)