厩舎には“カラー”というものがある。厩舎服の色を言っているわけではなく、例えば短距離、長距離、芝、ダート、牡馬、牝馬に強い、弱いといったもろもろの厩舎の特徴のこと。具体例を挙げると、すでに14頭の3歳馬が勝ち上がっている友道厩舎の内訳は、牡馬が「12」で牝馬が「2」。そしてダートの勝ち上がりは「0」だ。要は芝路線を歩む馬がやたらと多い。こうなると特にクラシック目前のこの時期は、振り分けが大変なことになる。
「馬が持っている最初からの適性に加え、厩舎でも距離を持たせることを考えた調教を組んでいる。そうなると、どうしてもレースが重なってきてしまいますよね。
皐月賞からダービーと路線が明確な
マイラプソディを別にすれば、それ以外の馬はどこのレースを
ステップにしてダービーに進むか、もしくはどこでダービーへの権利を取るか。頭を悩ませる日々なんですよ」(大江助手)
それこそ、先週の未勝利戦を勝ち上がったばかりの
アドマイヤベネラあたりはオミットしてもいいのでは…なんて思ってしまうかもしれないが、この馬こそ厩舎の期待馬であり、早い段階から「
青葉賞でダービーの権利を」という発言が出ていた背景を知っていれば、心配すべきは「1勝馬でも出走できるのか」。
もちろん、何頭かはマイル路線に回るのだろうが、
NHKマイルC→ダービーは意外に好走例のあるローテ。この路線の馬も頭に入れておかなければならないとなると本当に大変だ。
そんな状況下で
若葉S(21日=阪神芝内2000メートル)に登場するのが1月の新馬戦(京都芝外1800メートル)を勝ち上がった
アドマイヤビルゴ。セレクトセールの落札額5億8000万円だけが独り歩きし、肝心の能力について語られることの少なかった馬だが、それも当然といえば当然。デビュー前の陣営の評価は決して高いものではなかったからだ。
「これだけの血統馬ですから、多少のリップサービスはしてましたけど(苦笑)。正直なところを言えば、あまり自信はなかったですね。調教をやっても時計が詰まってこないし、芝の実戦で変わりそうな走りの軽さもなかった。緩いという印象ばかりが先にきていたので…。相手に恵まれてどこまでかな、と思っていたくらいですよ」
しかし、走らせてみれば、アッサリと1番人気に応えてしまったのは「血統馬の底力」なのだろうか。いずれにせよ、ここまでの話の流れからは“人気先行”にしか見えない
アドマイヤビルゴだが…。実は前走後の激変ぶりは驚くほどなのだという。
「見た目よりも体の使い方ですよね。力強さだけでなく、バネを感じるようになってきた。叩いて良くなるだろうな…とは思っていたけど、それは予想通りではなく、予想以上のものでしたね。
皐月賞に出るだけなら(優先出走権を獲得できる)2着でもいいんでしょうけど、ダービーまで考えるのなら、賞金の加算できる1着が欲しい」
この馬のためにも、そして、ダービーを目指す他の友道厩舎の馬のためにも、最短ルートで本番へ向かえるようなパフォーマンスを期待したい。
(松浪大樹)
東京スポーツ