牡馬に限った話をすれば、国枝厩舎の新馬は見送るべしとの馬券
セオリーがある。過剰人気を避けられないうえに、仕上げは常に先を見越した余裕残し。実際、妙味は皆無である。それでもポツリポツリ勝ち馬が現れるから厄介なもの。しかし割り切れば、それも素質の裏返し。新馬V馬はオープン勝ちまで狙い続けろ――。一方でこんな定石も成り立つのだから、悪くない選択だろう。
今週の
スプリングSに出走する
サクセッションはその代表的一頭だ。「まだ芯が入らず頼りない」(鈴木勝美助手)の声も聞かれた初陣は、当方の○印をあざ笑うかのような完勝。ゆえにその後3戦は
セオリー通りのオール◎。「あまりに強引な競馬」と
国枝栄調教師が嘆いた
デイリー杯2歳S(6着)は想定外でも、他の2戦は順当Vである。「馬は
ディキシーナイト(昨年
スプリングS3着)よりも上」(同師)とあれば今回も好勝負は必至だろう。
ただ「オープンを勝つまで狙い続けろ」の
セオリーに則すれば、より興味深いのは
阪神大賞典に出走する
ボスジラのほう。こちらは一昨年の福島で新馬勝ちしながら、2勝目を挙げるのに実に4戦の足踏みが続いた。それでもだんだん良くなる法華の太鼓――。近走の3連勝こそが、時が満ちるまで待つ“国枝イズム”の真骨頂である。
「まだ脚元に不安があってコースでビシビシとはいかないが、一戦ごとに体が締まって充実しつつある。もともと穏やかな馬だけど、落ち着いて泰然自若と構えているのがいいね。何よりこの性格が長丁場に合っているんだろう。全兄
ポポカテペトルが
菊花賞3着だから、血統的にもこの舞台を試す価値はある」
ボリュームある馬体は一見、ステイヤーのイメージを抱かせないつくり。それでも指揮官が語る通り、長距離向きのメンタルこそ近走の3連勝を支えている。
「
武豊騎手は“着差以上に余裕があった”と前走で言っていたし、どんな舞台でも安定して走れるのが強みだね。古馬になって完成してきた
マイネルキッツ(09年
天皇賞・春制覇)のような雰囲気もあるし、極端な上がり勝負でなければ重賞でもヒケを取らない」とは番頭格の鈴木勝美助手。
桜花賞に挑む全妹
ミヤマザクラとともに、春の阪神開催を大いに盛り上げる一族の走りに注目だ。
(美浦の宴会自粛野郎・山村隆司)
東京スポーツ