ジェットコースターのように評価が乱高下している馬がいる。
ブラストワンピースだ。3歳の身で一昨年の
有馬記念を制して一気に頂点に立ったはずが、昨年の
大阪杯では1番人気を裏切る6着敗戦。
凱旋門賞遠征でも大惨敗を喫した。果たして歴史に名を刻むスーパーホースになり得るのか否か…。運気が変わったかのように「最良の選択」を重ねて、たどり着いた第64回
大阪杯(4月5日=阪神芝内2000メートル)こそが、まさに“最適解”を出さなければならない舞台だ。
ブラストワンピースを所有するシルク・ホースクラブが、
大阪杯への出走をホームページで発表したのが先月6日。コ
ロナ禍はまだ現在のような危機的状況ではなく、中距離路線で活躍する日本馬の目標レースは、ドバイ国際競走を筆頭に、オーストラリアの
クイーンエリザベスS(4月11日)、香港のクイーンエリザベスII世C(4月26日)など、選択肢が数ある中での決断だったわけだが…。
その後、情勢は激変する。開催中止でレースを走ることなく帰国を迫られたドバイ遠征組、それに伴い騎乗機会を失ったルメール(帰国から2週間の自宅待機)…。開催の現実味と人馬への検疫問題、さらには相手関係を加味すれば、
大阪杯へという判断が結果的に「最良の選択」になったことは間違いなかろう。
さらにさかのぼれば、もうひとつ「最良の選択」をしている。それは昨秋にチャレンジしたフランスの
凱旋門賞(11着)後の復帰初戦に、年明けのアメリカJCCを選んだことだ。
ともに仏遠征した
フィエールマン、
キセキが
有馬記念に出走し、4、5着止まりに終わったのに対して、見事に復帰戦を勝利。馬自身のメンタル面をはじめ、大一番へと臨むにあたって、この違いは果てしなく大きい。
「過去を振り返ると、海外遠征帰りの馬は大半が厳しい競馬を強いられていますよね。なので、そこはスムーズにクリアできたのかな、と。昨年は昨年と割り切れる、いい区切りとなる競馬ができた」(大竹調教師)
凱旋門賞で勝ち馬
ヴァルトガイストから実に5秒2も離された大惨敗を喫した後。後遺症も心配されたところだが、まさに最高の
リスタートが切れた。となれば、あとは昨年のリベンジへ向けて、「最良の状態」に仕上げるだけだ。
26日の1週前追い切りでは南ウッドで6ハロン81・1-11・6秒をマークして、堂々の併せ先着。これには帰キュウ後初めて南ウッドで追われた際(19日)に「ドタドタしていた」と不満を隠さなかった大竹師も「(併せた)相手も動く中で、3〜4角でいつもはモタつくのに、むしろ(手綱を)押さえていたくらい。そこはかなり良かった。全体的に遅く見えても時計も出ていたからね。いい傾向だと思う」と確かな手応えをつかんだ。
「昨年の
大阪杯はポジションが後ろになった上に、流れもスローになってしまったから…。
札幌記念を勝っているわけだし、2000メートルの距離に関しては、むしろベストに近いかなとも思っています」
凱旋門賞(2400メートル)→アメリカJCC(2200メートル)、そして2000メートルの
大阪杯。段階的にベストの距離と状態へ。あとは答えを待つだけだ。
「昨年は1番人気に支持していただいたのに…。本当に悔しい思いをしました。また人気になるでしょうし、今年こそはいい競馬を…」
軽々に勝ち負けを口にはしない大竹調教師だが、令和競馬史の先駆けとなる名勝負の先にある、栄冠を信じているに違いない。
(立川敬太)
東京スポーツ