重馬場でスタートした中山の芝コースは、8レース以降稍重のコンディションになっていた。強い風と陽差しがさらに芝を乾かしていくなか、第80回
皐月賞が行われた。
ほぼ横並びのスタートから、8番
ウインカーネリアン、出鞭の入った14番
キメラヴェリテらが前に出て行く。
ダミアン・レーンの7番
サリオスも、手綱をガチッと抑えたまま先行する。
最内の1番枠から出た
福永祐一の
コントレイルは、中団より後ろの位置取りになった。
「スタートはよかったのですが、馬場の内が悪いのもあったのでしょうね。あまり進んで行きませんでした」
1、2コーナーを回りながら、ハナを切る
キメラヴェリテが後続との差をどんどんひろげて行く。向正面入口では、2番手の
ウインカーネリアンに6馬身ほどの差をつけていた。
サリオスは、
ウインカーネリアンから4馬身ほど離れた5番手。
そこからさらに5、6馬身後ろの内目に
コントレイルがつけている。
1000m通過は59秒8。馬場状態を考えるとやや速い流れだ。
3コーナーを回りながら、福永は
コントレイルを外に持ち出した。
「あの形になったら外ですね。返し馬の走りがよく、この感じなら今までよりもっといい脚を使えるんじゃないか、と。外に出してからは楽な手応えで上がっていきました」
ラスト600mで前の
マイラプソディが動くと、その外からマクるように進出。内の
サトノフラッグと併せる形で大外を回り、直線に入った。
一方の
サリオスは、4コーナーでは馬群に包まれていたが、直線入口で内の
キメラヴェリテと外の
ウインカーネリアンの間からロスなく抜け出し、ラスト200m地点で先頭に立った。レーンとしては、外の
ウインカーネリアンを完全に競り落としてから、少しでも馬場のいい外に持ち出したかったところだっただろうが、そのときにはもう、外から
コントレイルが並びかけてきていた。
サリオスと
コントレイルがビッシリ併せ、後ろを離して激しく叩き合う。
「直線は突き抜けるんじゃないかと思ったぐらいでしたが、さすがに相手も3戦3勝でGIを勝った強い馬だったので、簡単なレースにはならなかった」
そう振り返った福永の叱咤に応え、
コントレイルが半馬身前に出てゴールを駆け抜けた。
道中、前とは離れていても馬を信じていたという福永の大胆な騎乗で、
コントレイルは史上18頭目の「無敗の
皐月賞馬」となった。
(文:島田明宏)