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【勝負の分かれ目 天皇賞・春】ルメール騎手の自信に満ちた騎乗で、フィエールマンが競馬史に新たな足跡を刻んだ

  • 2020年05月03日(日) 17時45分
 この馬が前走のように出遅れるか、それとも速いスタートを切るかで展開が大きく変わる。そう言われていたキセキが、ポンとゲートを出た。観客が入っていたら大きく沸いていただろう。

 テン乗りの武豊を背にしたキセキは、1周目の3、4コーナーを3番手で回った。武がギリギリのところで抑えていたのだが、正面スタンド前で首を上げて行きたがったところで、無理に抑えるのではなく、馬の行く気に任せてハナに立った。

 1、2コーナーを回りながら後続との差をひろげ、向正面では2番手を3馬身ほど離した一人旅になった。

 クリストフ・ルメールが乗る1番人気のフィエールマンは中団の少し後ろ。馬はやや行きたがっているように見えたが、先頭から10馬身以上離れたそこからルメールは動こうとしなかった。

 向正面半ばを過ぎ、外からミッキースワローがかわして行っても、ともに上がって行こうとはしない。3、4コーナーでミッキースワローの後ろからじわっと押し上げて行くにとどめ、ラスト600m地点でも、まだ手綱を抑えている。

 4コーナーの出口付近でようやくルメールの手が動き、直線入口でミッキースワローの外に進路を取った。

 先頭は、これもいい手応えで直線に入ったキセキ。武の左ステッキを受け、末脚を伸ばす。令和初の春の盾も、平成初の春の盾をテン乗りのイナリワンで制した武の手に渡るのか――と思われたが、そこまでだった。

 ラスト200m付近で、スティッフェリオが外からキセキをかわし、先頭に躍り出た。

 さらに外からフィエールマンが伸びてくる。が、スティッフェリオも簡単には抜かせない。

 フィエールマンが1完歩ごとに差を詰め、内のスティッフェリオに並びかけたところがゴールだった。

 ゴールする最後の完歩で、首をぐっと下げて前に出したフィエールマンが鼻差の勝利をおさめ、史上5頭目の春の盾連覇をなし遂げた。

「ずっといいペースだったので、楽勝だと思っていた」と後ろに控えたルメールの自信に満ちた騎乗で、フィエールマンが競馬史に新たな足跡を刻みつけた。

(文:島田明宏)

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