競馬関係者は職業柄、根っからの
ギャンブラーが多い。例えば佐藤哲三氏(現競馬評論家)が現役ジョッキーのころは、趣味でもあるボートレース用語を交えて、競走馬の細かい動きなどを説明してくれたもの。当方は「なるほど、そうだったのか」と納得させられることも多かった。違った角度から競馬を見る、いい機会を与えてもらい、今でも貴重な財産になっている。
昨年の
エリザベス女王杯当時、担当の山下厩務員が「節一」と口にしていたのが
スカーレットカラーである。大のボートレース好きの山下厩務員は担当馬の
ジャッジを毎回ボートレース用語で表現してくれる。「節一=超抜」と高らかに宣言してくれたとなれば、こちらも迷いなく◎を打たせてもらったのだが、想定外のプラス14キロがこたえたのか、結果は7着惨敗。さすがに翌週は声をかけづらかった記憶がある。「実質、追い切り2本で少しかわいがってしまったのが…」と悔やんでいただけに、今回に懸ける思いはそれだけ強かろう。
前走の
阪神牝馬Sは
桜花賞以来、2年ぶりのマイル戦。しかもスタートでつまずいて、想定以上に後ろからの競馬になってしまったが、最後は馬群を割って「節一の伸び」を見せていた。
「前残りの展開で追い込んできたのはこの馬だけだった。ベストは1800メートルだろうと思っていたけど、筋肉質になってきた今は1600メートルが一番いいんじゃないかな」と手応えを感じている山下厩務員は「近場でも10キロは減る馬なのに、前走は16キロ増。今回はしっかりとやっていくよ」と今度こそ悔いのない、勝負仕上げを宣言している。
「実を言うと、岩田さんが“次は絶対に勝てる”って興奮気味に引き揚げてきたんだよ」
ご存じのように、その主戦・岩田康は負傷療養中。今回は石橋へと乗り替わりとなるが…。現在ボートレース芦屋で開催されているGI全日本王座決定戦の石橋道友の抜群の仕上がり具合を初日から見抜いたことに気を良くしてか、「道友のエンジンはええわ。あれは優勝やな。俺のにも石橋が乗るからな。心配ないだろ」と冗談めかしながらノープロブレムを伝えるのも自信の裏返しなのだろう。
昨年の
府中牝馬Sでは稍重馬場ながら、前週良馬場の
毎日王冠に0秒1差と迫る1分44秒5の好時計で勝利。断トツの最速上がり33秒2の爆発力はすさまじかった。東京コース、高速決着は大歓迎。しかも過去に騎乗したジョッキーたちは「少しでもスペースが空いていれば、すごい脚で伸びてくる」と証言しているように、抜群の勝負根性も併せ持っている。
「
アーモンドアイは確かに強いけど、今の充実ぶり、そして府中なら逆転も可能なはず」
再度の「節一宣言」をしている山下厩務員に乗って、
スカーレットカラーが
アーモンドアイを相手に豪快な「カドまくり」を決めてくれることを期待したい。
(栗東の遠吠え野郎・難波田忠雄)
東京スポーツ