クラシックに限れば、デビューから同じ騎手を鞍上に据える馬が基本的に優位という見方がある。キャリアが浅い若駒同士の戦いで重要なのは、いかに早く課題を見つけ、いかに早く修正するか。その過程においてジョッキーが担う役割は極めて重要だからだ。鞍上・
松山弘平を堅守した
デアリングタクトが
レシステンシアを負かした
桜花賞は、ある意味で妥当な結末だったのか。
だからこそ…。
ウインマリリン陣営にとって3勝すべてで手綱を取った
横山武史の騎乗停止は、大きな痛手だったに違いない。大半の馬が初距離となる
オークス(日曜=24日、東京芝2400メートル)は、勝負どころからの脚の使わせ方が重要なポイント。テン乗りでそれを把握し実行し得る騎手も限られるのだから。
「それでも最高のジョッキーが空いてたのは幸運だった」
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手塚貴久調教師のこの言葉は紛れもなく本音だろう。バトンは横山家の三男・武史から父・典弘へ。陣営が勝負を託したのは、鞍上が燃えずにいられない“DNAリレー”であった。くしくも父の騎乗停止で武史が手綱を取った昨年ダービー(
リオンリオン)とは逆になったが、現状において馬の把握力、実行力はやはり父が一枚も二枚も上である。
「はたから見ていて“よくあれで走れるな”と思っていたが、実際に動かして速いところへ行ってみて分かったよ。ひと言で言って“いい馬”。武史からもいろんなことを聞いているし、まだ手前を(ちょくちょく)替えたりするなど良くなる余地がありながら、あれだけ走れるんだからね。乗りやすいし、距離に関しては心配ない」
これは1週前追い切りで初コンタクトを取った
横山典弘の弁。癖を伝える前任者が本音でコミュニケーションを取れる間柄とはいえ、実際に乗ってみて理解する個性もあるのだろう。右ヒザの水疱など現状で見た目は冴えないが、メンタルの強さと操縦性の高さはやはり際立っている。
「もし勝てるようなら、
オークスはこの馬一頭で勝負してもいいかな」
これは
フローラS前に手塚師が当方にポツリと漏らした言葉。最終的には3頭出しでも、期待の差は言わずもがな。競馬界最強のバトンリレーに、打倒
デアリングタクトを期待してみようか。
(美浦の劣性遺伝野郎・山村隆司)
東京スポーツ