「数ある重賞の中で最も難解と言っていいぐらいのレース」と同僚記者が嘆くくらい、GIII
マーメイドS(日曜=14日、阪神芝内2000メートル)は毎年、荒れる。過去10年の3連単はすべて万馬券。うち7回は10万円オーバーと高額配当が続出しており、そりゃあ同僚も嘆きたくなるだろう。
私が競馬記者になってまだ間もなかった昨年は、7番人気の伏兵
サラスが胸のすくような直線一気の末脚で見事に差し切り勝ち。管理する西村調教師を改めて取材すると「もともと能力は高い馬だったけど、それをどう生かすかで悩んでいたんだよね。あの時は後ろから行かせたことが結果、ベストの判断だった」と振り返ってくれた。
当時の
サラスは先行か差しか、どっちつかずな戦法で好走と凡走を繰り返していたが、「決め打ち」が功を奏したのだ。トレーナーの“英断”をレース前に聞いておけば、おいしい馬券を手にできたかも…。
サラスはその後、長期休養を経て先月の
新潟大賞典(15着)で復帰。今年の
マーメイドSにも出走予定で、西村調教師は「前走は長く休んだ分、しっかり稽古して臨んだ。だから反動はなかったし、使った分、状態は確実に上向いているよ」と一変がありそうなムードなのだが…。昨年の覇者を伏兵扱いするわけにもいくまい。
求む伏兵――。できれば能力の確かな裏付けを持った馬が理想…って、そんな都合のいい馬なんているわけない? いやいや、いるではないか。一昨年の
オークスで、あの
アーモンドアイ、
ラッキーライラックに次ぐ堂々の3番人気に推された実力馬が…。そう、
サトノワルキューレだ。
オークス前までの
サトノワルキューレの戦績は4戦3勝(3着1回)。
ノームコア、
エタリオウといった、のちにGI戦線をにぎわす素質馬たちにも完勝しており、「遅れてきた大物」的な評価を受けていた。
それがどうだ。
オークス(6着)以降は勝ち星どころか、掲示板入りすらない、信じがたい低迷ぶり。「調教ではいい動きをするんですが、結果につながらないんですよね」という小滝助手の苦悩に満ちたコメントが何度となく繰り返されてきたのだが…。この中間、
サトノワルキューレについて話をうかがった際の小滝助手の口調は思いのほか明るいものだった。
「2走前の
白富士S(6着)で久々にいいところを見せてくれて。前走の
大阪城S(13着)は馬場が渋って苦労しましたが…。その後の放牧でリフレッシュできたのか、体が見違えるくらい大きくなって帰ってきました」
3日の1週前追い切りではウッド6ハロン80.0-12.0秒の好タイムを叩き出し、自己ベストを更新。確かに雰囲気が変わってきたのを感じる。
「最近はワンターンの競馬ばかり使って結果が出ていなかったので、今回は久々にコーナー4つの舞台を使ってみようと。これがいいきっかけになれば」(小滝助手)
サラスの「決め打ち」がハマった時のように、コーナー4つへの舞台替わりが“英断”になれば…。復活の
サトノワルキューレが私に特別ボーナスを届けてくれるかもしれない。
(元広告営業マン野郎・鈴木邦宏)
東京スポーツ