今夏の中央開催は雨にたたられ通し。2回福島、4回阪神開催は良馬場で行われたレースが一切なく、芝コースは馬場の傷みも目立ってきた。そうなると、馬の脚力以上に勝敗を左右するのが騎手の
インサイドワークなのだろう。求められるのは流れや展開を読み、位置取りや仕掛けどころを決断する作業。
内田博幸の2週連続重賞Vは決して偶然の産物ではない。
悪馬場は馬より騎手で買え――。それは6年ぶりに最終週の馬場で迎える
函館記念(日曜=19日、函館芝2000メートル)も同じかもしれない。今週クローズアップしたいのは、
ニシノデイジーと昨年の
セントライト記念(5着)以来のコンビを組む勝浦正樹だ。5走ぶりに戻ったお手馬への思いは、きっと他の誰にも負けない熱さに満ちていよう。
ルメールに鞍上交替となった
菊花賞。それは彼にとっても無念の一戦だったに違いない。レースは2番人気の高い支持率に反して後方のまま9着で期待外れとあれば、普通はディスりたくなるのが心情なのだが…。
「騎乗ミスなんて一つもなかったですよ。ルメールも全力を果たした競馬だったと思います」
レース翌週、偶然居合わせた美浦のバーで当方の問いかけに対して勝浦が口にした言葉だった。当時は紳士的な答弁と解釈したが、それが本音であることを思い知らされたのは前走の
目黒記念(18着)である。
「前走は前につける競馬をしてみたんですが…。結果を見ると、自分のリズムで走らせてこそ脚を使うタイプですね。いつも展開待ちでは歯がゆいけど、あれだけ負けたら吹っ切れました」
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高木登調教師のこの言葉は、おそらくオーナーサイドの気持ちも代弁している。勝浦が主戦から降ろされた理由は、消極的と映った騎乗から。ゆえに今回の再タッグは、前任者の見立てが正しかった証明と言えないか。まあ、別れてから良さに気づくのは男女間でもありがちだ。
「洋芝は実績があるし、少し時計がかかってくれるといいんですけどね」
この指揮官の願望もかなり現実味はあろう。ラストデーの
函館記念は近10年で2回あるが、ともに2分00秒台で差し&追い込み馬による決着だ。リズム重視で直線勝負――。こんな“勝浦
スタイル”が鞍上の熱意と相まって、ずばりとハマるシーンを期待してみたい。
(美浦の元サヤ野郎・山村隆司)
東京スポーツ