注目の
マスターフェンサーは、日本では初めての重賞挑戦で、地方も初めて。一方、実績上位の
デルマルーヴルは1頭だけ別定3kg増の57kgがどうか。
マスターフェンサーが人気の中心となり、単勝では
ヒストリーメイカーが2番人気だったものの、連勝系のオッズでは相手筆頭は
デルマルーヴル。人気を集めた2頭が、坂のある2000mというスタミナが要求されるコースで能力を発揮した。
これといってハナを主張する馬もなく、逃げたのは北海道の
リンノレジェンド。良馬場ではあったものの、2日前にレースが取止めになるほどの豪雨があって時計の出やすい馬場。1000m通過62秒0はゆったりした平均ペース。その1000mを過ぎたところから好位の中央有力勢が徐々に動き出し、先頭の
リンノレジェンドに並びかけた残り800mのあたりから徐々にラップが上がり始めた。
向正面に入ったあたりの位置取りでは、前3頭からやや離れた4番手が
マスターフェンサーで、差なく
ヒストリーメイカー、
ランガディアと続いて
デルマルーヴルは中団7番手。早めに仕掛けて前をとらえにかかったのが
デルマルーヴルで、
マスターフェンサーは3コーナー過ぎからこれを目標にする形で動き出した。ここが勝負のひとつのポイント。直線坂下、
デルマルーヴルが先頭に立ったが、坂を上がったあたりで
マスターフェンサーがとらえて突き放した。
1、2着の着差は1馬身半で、3着の
ランガディアにはさらに5馬身差がついた。盛岡のダート
グレードでは、短距離の
クラスターCはともかく、
南部杯、
マーキュリーCは、能力差以上に着差がついての決着が少なくない。冒頭でも触れたとおり、盛岡のダートコースはスタミナが要求されるコース。
マーキュリーCの過去の上位馬を見ても、1600〜2000mが守備範囲の馬より、2100m以上のダート
グレードで実績を残している馬の好走が目立つ。
デルマルーヴルはもちろん、どうやら
マスターフェンサーもそのタイプであるようだ。
マスターフェンサーは、結果的に中止になったドバイ遠征を挟んで、ここ3戦は東京ダート2100mを使われてきた。準オープンの
金蹄Sを勝って、その後のオープン特別はともにきわどい2着。特に前走スレイプニルSは前半1000m通過が63秒というスローペースで、直線追い比べのスタミナ勝負。10頭立てで、逃げて7着だった
ダイシンインディーと、最下位の
テルペリオン以外の8頭が上り35秒台という勝負。勝った
エルデュクラージュには及ばなかったが、3着以下は完封していた。東京ダート2100mと盛岡ダート2000mは、左回りのコーナー4つに直線に坂があるという似た形態。ドバイを使えず脚質に合ったレースを選んだら東京2100mが3戦続いたということなのだろうが、
マーキュリーCの前哨戦としては最適な臨戦過程だった。
中央では
ルメール騎手とリーディングを争っている
川田将雅騎手は、今年これで地方のダート
グレードは5勝目。とにかく乗れている。
デルマルーヴルを目標にした仕掛けのタイミングは見事だった。
さて、
マスターフェンサーの今後となると、流れがあまり緩むことがなく、ゴール前の瞬発力も要求される中京1800mの
チャンピオンズCはおそらく向いていない。大井2000mのGI/JpnIも、よほど前半がスローに流れるような展開にならない限り難しいように思われる。
デルマルーヴルと同じく、2500mの
名古屋グランプリや2100mの
川崎記念あたりで能力を発揮するのではないか。
デルマルーヴルも別定3kg増の57kgを考えれば持ち味を発揮した。
名古屋グランプリでは3コーナーから前4頭を追いかけ、194mという短い直線で見事に差し切ったが、盛岡の直線は坂があって300m。3コーナー手前から動き出したのはちょっと早かった。1番人気ではなくとも実績最上位なだけに勝ちに行く競馬をしなければならないということはあっただろうが、そのぶん、
マスターフェンサーの格好の目標となってしまった。
中央勢上位独占の一角を崩して3着に入ったのが
ランガディア。中央時代はずっと芝を使われオープンで頭打ち。最後にダートの
総武Sを使われたが、16頭立ての最下位という成績で岩手に移籍してきた。調教師も驚いたという、砂の重い水沢の、しかも良馬場で重賞3連勝。それでも中央時代の実績からさすがにこのメンバーでは6番人気。しかしながら時計の出る盛岡でも中央勢と互角に渡り合った。むしろダートにこそ適性があったのではないかと思える岩手移籍後のレースぶりだ。道中は1、2着馬と同じような位置を進み、ペースアップしたところではやや置かれたが、それでも直線で使える脚をしっかり残していた。デビュー5年目の
鈴木祐騎手は殊勲の騎乗だった。芝コースもある岩手なら今後の選択肢がさまざまに広がる。
ヒストリーメイカーは、うしろから
デルマルーヴルが来たタイミングで動き出し、3、4コーナーでは先頭をうかがった。やはりそれではタイミングが早く、直線の坂で脚が上がってしまった。前走
平安Sが馬体重20kg減で、
オメガパフューム、
ゴールドドリームという超一線級を相手に4着。それで今回さらに馬体減ということでは、
平安Sで目一杯の競馬をした反動があったのではないか。