言い訳に聞こえるかもしれないが、関係者の談話を活字にする作業は簡単そうに見えて案外難しい。諸事情により公にできない部分や、専門的過ぎて読者に伝わりにくい部分は削除せざるを得ないし、騎手や調教師の感触が食い違う際は掲載にも気を使う。とはいえ読者に届けるべきは、馬券購入において適切かつ有効なお話。確定版の短い厩舎談話ひとつにも、意外に記者の力量が詰まっていたりするのだ。
もっとも談話に気を使うのは、実際に話す関係者も同様である。ゆえに「こう書いてほしい」とリク
エストがあれば応える場合も。昨夏にネットをザワつかせるコメントが東スポに掲載されたのは、実はそんな背景があったと打ち明けよう。
「軽い馬場が合うから、釧路湿原くらい馬場が湿ってくれたら…」
これは昨年の札幌・
釧路湿原特別(2勝クラス)に出走した
ライジングドラゴン=落合直之助手の談話。一見“なんのこっちゃ?”である。単に脚抜きのいいダートが理想という意味なのだが、シャレを利かせたコメントを売りにする彼が「東スポなら掲載できるはず」と当時ムチャ振り。その要望に堂々応えたというのが実情だ。
さて、今週から始まる札幌開催の舞台で、その“迷コンビ”と1年ぶりに再会した。日曜メイン・大雪ハンデキャップ(26日、札幌ダート1700メートル、3勝クラス)に挑む
ライジングドラゴン。1年を経て馬がどう成長したか気になったのだが…。
「昨年と比べて?うん、大雪山のように白くなりましたよ」
さすがの答弁である。舞台は過去2勝の札幌、ハンデは55キロ、鞍上は手の合う
吉田隼人。ノリノリの気持ちも分かるが、週末の降水確率は10%程度。そのあたりは実際どうなのか?
「1勝クラスを勝った時が稍重だったので、雨馬場は得意と昨年は思っていたんですが…。ごめんなさい、それが完全な見込み違い。前走の
門司S(不良)は馬場を気にして進んでいきませんでしたからね。大外枠で終始外を回るロスもあったけど、昨年勝った
釧路湿原特別が良馬場だったし、乾いたダートのほうがいいみたい。放牧明けでもしっかりやった先週の感じは良かったけど、追い切り後はしっかり
ジャッジしますのでまた取材に来てください」と落合助手。一見オチャラケていても、対応は至って誠実。そんな彼を週末は再取材し、幸先のいいスタートを切る算段である。
(札幌のツッコミ野郎・山村隆司)
東京スポーツ