松永昌厩舎の中山義一助手(64)が、20日付で定年を迎えた。大学卒業後、
スキー(資格最上級のクラウンを持つ)、
サーフィン、車、バイクなど多彩な趣味から選んだのが馬乗りだった。「波乗りはハワイの子に勝てない。食べていけるなら馬乗りかな、と。父親(義次さん)がジョッキーで、馬に乗るのが好きだった。目方が軽い分、適していたんだろう。自分で操作できるし、ちょっと危険なぐらいが面白い」と笑う。
厩舎解散まで北橋厩舎に所属し、
エイシンプレストン、
スターリングローズなど、多くの重賞ウイナーを調教した腕利き。そして当時、厩舎の所属騎手だった福永の兄貴分だった。「ユーイチが幼稚園の時から知ってる。初めの頃はこの子、騎手に向いてないんじゃないか?って思ったけど、いっぱしになった。オレが現役の間に、ダービーを勝ってくれよ、って言っていたが、果たしてくれた」と目を細める。調教をつける“攻め専”にこだわり続けた42年。「ジョッキーが乗りやすいように、とやってきた。たくさんのいい馬に乗せてもらって、充実したいい仕事だった」と感慨深げだ。
思い出の一頭を挙げてもらった。「
ウインバリアシオン。松永先生を日本一高い所へ、と思っていて、かなえられると思っていたけどね…。裂蹄や屈腱炎がなければ天下を取れていたよ」。裏方として、馬と人を支えた職人が惜しまれつつ一線を退く。(デイリースポーツ・井上達也)
提供:デイリースポーツ