ちょうど1年前、小倉開幕直前の取材中に初めて「九州産」なるレースの存在を知った。文字通り九州産馬のみで行われるレースのことで、馬産地の振興等を目的に設けられている競走なのだが、関係者の口から「九州産馬」というワードが発せられるたびに、いわゆる「一般馬」からは数段レベルが落ちる馬といった意味合いが言外に含まれている気がして、なんだかかわいそうな気分になったのを思い出す。
しかし、時には「九州産馬」の中にも新馬戦で並みいる「強豪一般馬」たちを蹴散らす強者も現れたりする。現2歳世代で注目を集めているのは
ヨカヨカだ。現在は土曜の九州産馬限定オープン・
ひまわり賞(土曜=29日、小倉芝1200メートル)制覇を目指して小倉競馬場に滞在中。そして私も運がいいことに小倉に来ているのだから「
ヨカヨカ」を素通りするわけにはいかんばい。
6月13日の新馬戦(阪神芝内1200メートル)で一般馬を退けた
ヨカヨカ。アタマ差で競り勝った2着馬
モントライゼが次走の未勝利戦を大差で圧勝したことで評価を揺るぎないものとした。次走のオープン・
フェニックス賞(小倉芝1200メートル)は断然の1番人気を背負って快勝。
ひまわり賞での無傷の3連勝が確実視されている。そんな
ヨカヨカも栗東入厩当初から超エ
リート候補生だったわけではないのだとか。
「宮崎(
JRAブリーズアップセール)で一番時計を出したくらいだから、ある程度は出来上がっていたんだけど、最初のうちは(栗東の調教コースで使われる)ウッドチップに戸惑って、なかなかいい時計が出なかったんだよね。だから“九州産の中では上位なのかな”ってくらいの印象だった。それがゲート試験でモタッとしたときに肩ムチを入れたら突然、ギアが変わったような、すごい走りをしてくれてね」(川端助手)
その後、ウッドチップ馬場での走りを完全にマスターした
ヨカヨカは、新馬戦当週の坂路での最終追い切りでラスト1ハロン11.9秒の猛時計をマーク。今の活躍を予感させる動きを見せるようになったのだとか。もちろん、
フェニックス賞後の調整にも余念はない。
「小倉では西谷ジョッキーに調教での騎乗をお願いしているんだけど、彼が乗るようになってからさらにパワーアップしている感じがするんだ」と川端助手。水曜(26日)の最終追い切りにも西谷が騎乗。「(レースで騎乗する福永)祐一さんからは折り合い重視で」との指示を受けたそうで、前進気勢がうかがえる中に、抑えも利いている、納得の稽古が消化できたのだという。
ヨカヨカの故郷・熊本はご存じの通り、7月の豪雨で甚大な被害に見舞われ、今も復興のさなかにある。
ヨカヨカには苦難にあえぐ故郷の人たちが一瞬でも笑顔を取り戻せるような爽快なレースを見せてほしい。
(元広告営業マン野郎・鈴木邦宏)
東京スポーツ