秋のGIシリーズ開幕戦・
スプリンターズSが行われた先週は、
グランアレグリアに翻弄された1週間であった。結果は周知の通りの圧勝劇。
安田記念で
アーモンドアイを破った実力を改めて世間に知らしめることとなった。
戦前の
グランアレグリアの懸案材料は、
ディープインパクト産駒にGI制覇例のなかった芝1200メートルという舞台設定。さらに個人的には状態面、すなわちフィジカルに疑念を抱きたくなる面もあった。
藤沢和厩舎は毎週火曜に入厩各馬の計量を行い、大仲(厩舎スタッフの待機所)の
ホワイトボードにその数字が記されているのだが、
グランアレグリアはレースの1週前、当該週ともに506キロ(
安田記念比14キロ増)。そして藤沢和調教師は1週前の取材で「ずいぶんと穏やかになって、馬体が大きくなった。馬体重がかなり増えているから絞っていきたい。3歳春まではあまりカイバを食べなかったけど、今はよく食べるんだ。まあ、年齢的なものだから仕方がないんだけど…」とコメント。馬体を絞るのに苦労していることが言葉の端々からうかがえた。
実際、1週前追い切りの反応が少々鈍かったように見えたし、ルメールを背に併せ馬を行った最終追い切りも、デビュー時から
グランアレグリアの調教を見ている身としてはまだ物足りず…。
極め付きはレース前日に坂路で4ハロン54.5-12.9秒をマーク。馬体を絞る、あるいは気持ちを乗せるため、意欲的な前日追いが日常的だったひと昔前ならともかく、昨今はこんな時計を出すことなどまずない。そんな封じ手を使ってまでシェイプアップに努めた
グランアレグリアだったが、火曜から2キロしか変わらない504キロでレースを迎えてしまっては…。
以上が担当する最有力馬に◎を打てなかった言い訳である。疑ってかかったフィジカルの事案はすべて
グランアレグリアの身体的、精神的成長であり、何より能力が違った。予想センスのなさもそうだが、読者のお役に立てなかったことも猛省したい次第である。
さて、例年の傾向とはいえ、4回中山開催にはトータル11頭しか出走させなかった藤沢和厩舎が、開催替わりの東京開幕週には7頭がスタンバイ。
シルバースピリット、
アルマドラードの良血新馬2騎は確勝級だと思っているし、
キングストンボーイ(
サウジアラビアRC)、
レッチェバロック(2勝クラス平場)あたりも重い印がつく有力馬である。
一方、
毎日王冠(日曜=11日、東京芝1800メートル=1着馬に
天皇賞・秋優先出走権)の
コントラチェックはここ3走2桁着順が続いているとなると苦戦必至? いやいや、次週に
府中牝馬Sがありながら、ここを選択した藤沢和調教師の真意は、
天皇賞・秋への参戦を前提に、逆算したローテ上の優位性を重視したようにも感じられる。
「一流の馬なら、逃げの戦法しかできないようではダメ。レースの流れに合わせた競馬ができてこそだろ」
過去4勝がすべて逃げ切りの
コントラチェックに、トレーナーはそう注文を付けた。近走も逃げに徹している
トーラスジェミニがいる今回は差しに回るのか、それとも久々に逃げを打つための煙幕にすぎないのか…。今週末も予想と邪推のはざまで、もがくことになりそうだ。
(美浦のイレブン野郎・立川敬太)
東京スポーツ