この秋は続けざまに無敗の3冠牝馬、3冠牡馬が誕生。そして、畳み掛けるように先週の
天皇賞・秋では
アーモンドアイが史上初となる芝GI8勝目を挙げた。四の五の言わせない、強いものは強いという姿にスカッとした心持ちに。
今週はそんな緊張感に包まれたGIの合間ではあるが、GII
京王杯2歳S(7日=東京芝1400メートル)には興味深い一頭がエントリーしている。大江原厩舎所属の
ユングヴィの父は
ミュゼスルタンというマイナー血統。初年度の3頭すべてが大江原厩舎の管理馬という“超レア物”だ。
ミュゼスルタンを少しおさらいすると、2014年夏デビューで
新潟2歳Sをレコード勝ち。厩舎の過去2頭の重賞ウイナーのうちの1頭であり、
NHKマイルC3着→ダービー6着と最高峰の舞台でも善戦した。最初で最後となったダート戦(青梅特別)をあっさり勝利した後、右第4中手骨骨折により、全7戦の短い競走生活の幕を閉じている。
ちなみに
母ハンナもまた厩舎の管理馬。まさに筋金入りの“大江原ブランド”である愛馬
ユングヴィのデビュー前、トレーナーは「産駒が一つでも勝てばいいな」と祈るような願いを口にしていたものだ。
父の主戦でもあった柴田善騎手がデビュー戦(4着)に続き手綱を取った2戦目、その願いは現実のものとなる。初戦から16キロ増の馬体で1秒2差の圧勝。しかもノーステッキで…。ド派手に決めた
ユングヴィはこの中間、さらなる進化を見せているという。
調教を担う浅井助手が「稽古での反応は確実に良くなっています。まだ普段はおふざけ感が多分にありますが、春先と比べたらだいぶ真面目。前走は集中し過ぎるほど集中して走っていたし、オンとオフのメリハリはあるみたい。脚がかなり短いんですが、逆に回転はすごく速いんですよ」と評すれば、これを受けた担当の村山厩務員からも「実際に脚は短いよ。ただ手前の替え方がすごく滑らかで同時に加速するのがいいところ」と“短足体形”ゆえのメリットも聞こえてきた。
直前の坂路での追い切りも、ジョッキーを背に馬なりで実に軽快な動きを披露。トレーナーも「稽古ではどの馬も勝てないよ」と満足げな表情を見せていたように、仕上がりはバッチリだ。
ユングヴィが父
ミュゼスルタンの名を全国区にとどろかせるかもしれない。これはこれで「歴史的な一番」をしっかり見届けたいと思っている。
(美浦の転がし女・田幡ゆうこ)
東京スポーツ