当方がまだ駆け出しのころに「左回りは初めてですけど、どうですかね?」と関係者に質問をしたら「アホなこと聞くな。馬はみんな左回りが得意なはずなんや」と一蹴されたことがあった。
関係者から教えてもらったり、当方が個人的に調べた話をまとめると、もともと馬は右にゆがみがあって、左肩のほうが出しやすいらしい。それは母馬のおなかにいるときに右脚が下で、首を右に向けているため。左回りはコーナーまで左手前で走ることを求められる。よってどの馬にとっても、本質的には左回りのほうがいいはず、との結論に至った。
だからこそ?物事を合理的に考える米国競馬は左回りで行われているし、日本の芝2000&2400メートルのレコードはいずれも左回りの東京でマークされているのにも納得がいく。
「左回りは初めてですが、コーナリングはスムーズと思わせてくれるし、左回りのほうがより走る感触があるんですよね」
そんな興味深い話をしてくれたのが、昨年の
有馬記念3着以来の実戦となる
ワールドプレミアの大江助手。一頓挫あって
天皇賞・春を使えず、
宝塚記念も見送り、実に11か月ぶりの復帰戦となると状況的には明らかに厳しいが…。
「昨秋に馬がグッと変わったように、まだまだ良くなる余地のある馬ですから。攻めで時計の出るタイプではないのに、1週前は坂路で好時計(4ハロン52.1-12.8秒)が出た。昨年と比べても筋肉のつき方が良くなって、いい意味で雰囲気も大人になってきています」
大江助手が休養期間中のさらなる進化を示唆しているとなると、話は変わってくる。
菊花賞勝ちから
有馬記念3着善戦と元値は高いうえに、当時よりさらにパワーアップ。しかも初の左回りもむしろ得意となれば…。
2015年
朝日杯FSでのこと。
JRA・GI完全制覇(当時)がかかっていた
武豊が
エアスピネルで
リオンディーズ(M・デムーロ)の2着に敗れた際、「空気の読めないイ
タリア人がいた」とレース後に周囲を笑わせたことがあったが、今回は
武豊自身が「3冠馬3強対決」で盛り上がる中、
ワールドプレミアで空気の読めない騎乗を見せてくれるのではないか。
ジャパンC史上、いや、日本競馬史上「最も空気の読めない第一人者」として、今後も語り継がれることをひそかに期待している。
(栗東の遠吠え野郎・難波田忠雄)
東京スポーツ