昨年1年で驚くほどの成長を遂げた
カジノフォンテンが、あらためてその能力の高さを見せた。
1番枠からのスタートで競りかけられることもなく先頭に立った
カジノフォンテンには願ってもない展開。
ダノンファラオが川田騎手に乗替った前々走から好位に控える競馬をするようになったのも、
カジノフォンテンにとっては幸運だった。JpnIだけに、さすがに道中で14秒台までラップが落ちることはなかったが、1周目の3コーナーを回って隊列が決まると、残り800mまでに13秒8というラップが3つあった。
そのスローペースで、スタート後は中団よりうしろにいた
オメガパフュームが、最初のスタンド前で2番手の
ダノンファラオの直後まで位置取りを上げてきた。しかしあまり早めに先頭に立ちたくはない
オメガパフュームはそれ以上は動かず。その他有力馬にとっては、相手は
オメガパフュームと見ているだろうから、単騎先頭の
カジノフォンテンに鈴を付けにいくというわけにもいかなかったのだろう。
向正面に入ってじわじわとペースを上げたのは
ダノンファラオ。とはいえ一気に
カジノフォンテンをとらえようというほどでもなく、十分に溜めができている
カジノフォンテンは、
ダノンファラオが来たらそのぶん逃げるだけ。
3コーナー過ぎで勝負があった。2番手集団で追いかける
ダノンファラオ、
タービランス、
オメガパフュームそれぞれの鞍上の手が動き出していたのに対して、
カジノフォンテンの
張田昂騎手は抑えたまま。直線を向いて追い出されると、これに食い下がれる馬はいかなかった。
カジノフォンテンは、
東京大賞典で
オメガパフュームにクビ差2着という走りを見せただけに、逃げればもっとマークがきつくなるかと思ったが、
オメガパフュームという絶対的な存在がいたために、そうはならなかった。それにしても張田騎手は絶妙なペースに持ち込んでの逃げ切りで、2分14秒9という勝ちタイムも近年のこのレースと遜色のないもの。前哨戦・報知
オールスターCの
タービランスの勝ちタイム(2分16秒6)より2秒近く速かったということでは、内容的にも評価できるJpnI勝利といえる。
オメガパフュームは直線半ばで手前を換えてからよく伸び、すぐ前にいた
ダノンファラオ、
タービランスをとらえて2着を確保。堅い決着が多いこのレースで、2004年から続く1番人馬の連対というデータをなんとか継続した。
川崎記念はJpnIでもメンバーが薄くなることが多いが、それでも左回りでは勝利に至らず。これで、右回り【9-4-1-0】に対して、左回りは【0-2-1-3】。早め好位につけての3馬身差は、やはり適性というべきだろうか。
ダノンファラオは向正面でペースアップしたときに、
カジノフォンテンを一気に交わしてしまえばどうだったろう。しかしそれで
カジノフォンテンが引かなければ共倒れになってしまう可能性が高い。すぐうしろにいる
オメガパフュームを意識しながらの判断は難しかったと思われる。
浦和記念では
ダノンファラオに0秒1差で4着とダート
グレードでも通用するところを見せていた
タービランスは、今回も3着
ダノンファラオに0秒1(半馬身)差。勝った
カジノフォンテンにはやや離されたとはいえ、GI/JpnI勝ちのある2、3着馬とほとんど同じ位置を追走して、ほとんど差のない決着は評価できる。明けて8歳になったがまだまだ期待できそうだ。
ミューチャリーは向正面で大きく離されてしまった2頭を別とすれば、8頭一団の最後方から。メンバー中最速の上り3F=37秒1で、今回も切れる末脚を見せた。しかし前残りの決着では、ようやく
ロードブレスをとらえたまでで5着。
オメガパフュームのように早めに位置を取れなかったものかという思いは、
東京大賞典のときにも感じていた。ただこうした脚質の馬は、早めに位置を取ったとしてもそこから同じように脚を使えるわけでもないのだろう。それでも3歳以降、南関東のGI/JpnIでは、3、4、4、5、5着。もう少しメンバーが軽いダート
グレードなら勝てそうだが、中央も含めて関東圏から外へ出たことがなく、ある程度広いコースに限られるとなると、合う条件を探すのが難しい。
それにしても中央勢で掲示板はGI/JpnI勝ちのある2頭のみで、地方勢(というか南関東勢)が3頭掲示板という結果は健闘といえる。
近年、
JBCスプリントを地方馬が連覇したのをはじめとして、ダート短距離路線では地方馬の活躍が目立っている。ところが、2歳戦と牝馬限定戦を除くと、マイル以上のダート
グレードで地方馬が勝ったのは、2017年
ジャパンダートダービーの
ヒガシウィルウィン以来。古馬となると、2015年
浦和記念の
ハッピースプリント以来、じつに5年以上ぶりだった。これをきっかけに、中距離路線でも引き続いて地方馬の活躍を期待したい。