牝馬クラシック第1冠の
桜花賞は、前年暮れの阪神JFからのぶっつけ参戦だった
ソダシ、
サトノレイナスの再度のワンツー決着で幕を閉じた。
グランアレグリアが前年の
朝日杯FS(3着)から、やはりぶっつけで
桜花賞を制したことが話題を集めてからわずか2年。もはや前哨戦→本番という従来の
セオリーは過去の遺物となってしまったのか?
もちろん、ローテうんぬんの前に、
ソダシと
サトノレイナスの力量が同世代の牝馬の中では抜きんでている可能性もまた否定できない。しかし距離、コースと舞台が大きく変わるのを味方に、間隙を突こうとしている馬がこのGII
フローラS(25日=東京芝2000メートル)にエントリーしているではないか。そう、
ジェニーアムレットだ。
昨年11月の新馬戦(東京芝2000メートル)でクビ差2着に敗れた後、2戦目に選択した今年2月の未勝利戦の舞台は
オークスと同じ東京芝2400メートル。そこで牡馬相手に4馬身差圧勝を演じてみせた。改めてレースを振り返ると、そのすごさが浮き彫りになる。
好発からハナに立った後、途中で折り合いを欠いた馬に先頭を譲る形に。しかも7ハロン目から11秒6-11秒3-11秒9と3度の11秒台を刻む、息の入らない流れ。途中でハナに立った馬は13着に沈み、4角3番手で並んでいた2頭も7、8着に敗れた中、
ジェニーアムレットは2番手から楽々と抜け出してしまったのだから末恐ろしい。勝ち時計2分26秒3は翌日のゆりかもめ賞(3歳1勝クラス)を0秒6上回る。
オークスと同じ舞台で見せた、このハイパフォーマンスは、本番出走がかなった時に大きな意味を持つことになるだろう。
「前走は途中でペースダウンをさせず、この馬に合う競馬をしてくれました。(前半1000メートルを65秒4で逃げた)新馬戦のような上がりの速い競馬にしてはダメ。とにかくスタミナが豊富だから、よどみない流れからの消耗戦に持ち込んだほうがこの馬の良さが生きるし、そういった流れになれば本質的な能力差が出るからね」(加藤征調教師)
ジェニーアムレット最大の武器=スタミナを存分に生かせる消耗戦になれば、他馬との実力差がより浮き彫りになるというわけだ。しかも当時が3か月ぶりの実戦なら、今回はそこから2か月半のレース間隔。使い込めない体質の弱さが垣間見える半面、だからこそ
ジェニーアムレットにはまだまだ伸びシロが見込めることも意味している。
「左前の球節にまだ弱いところがあって、現状はレース間隔を空けながらの出走になっているけど、幸い今は脚元も落ち着いている。実戦を2回経験した分の体力アップは当然あるし、追い切りの動きも現状としては申し分ない。とにかく長い距離がいい馬。牝馬同士なら重賞でもやれる力はあると思っていますよ」とトレーナーは手応え十分に言葉を続けた。
記者が担当厩舎として取材を重ねてきた
グランアレグリアもそうだったが、3歳春の時点でどこにも不安のない牝馬などいるはずがない。そして力のある馬は求められるレベルが違ってくるのも当然だ。
ちなみに
ジェニーアムレットは、昨年10月が締め切りの3歳馬5大競走特別登録で、
オークスだけでなく、ダービーと
菊花賞にもエントリーしていた。そう、陣営は早い段階で“長い距離でこそ”の素質を見いだしていたのだ。まずはこの
フローラSの走りで、その夢を現実へと引き寄せてくれるに違いない。
(立川敬太)
東京スポーツ