初戦の勝ちっぷりにインパクトのあった馬は後々まで出世する――。
これは後出しジャンケンでもなんでもなく、信頼度の高いバロ
メーターと言っても差し支えないと思っている。理由は簡単。後にGIを制する馬と未勝利で終わる馬が一緒に走るのは、ほぼ新馬戦しかないからだ。そこにはハッキリとした能力差が反映されてしかるべきだろう。
記者が過去に最も衝撃を受けたのは
サトノダイヤモンドの新馬戦。直線を向いて抜け出してきた瞬間は、大げさでもなんでもなく、他馬が止まっているように見えた。当時、自分の書いた記事を読み返してみると「文句なしのクラシック候補」「伸びシロは相当」と興奮気味にスター誕生を伝える言葉が並んでいた。「栴檀は双葉より芳し」のことわざではないが、やはりすごい馬は最初からすごいのである。
で、本題はここから。なぜ、これだけ長々と前振りを書いたかというと、第82回
オークス(23日=東京芝2400メートル)に出走するメンバーの中にも、新馬戦でオッと思わせる勝ち方をした馬がいるからだ。
それが今野厩舎の
アールドヴィーヴル。不良馬場の中、普通では届かないような位置から直線一気を決めたその走りは、昨年の新馬戦の中でも指折りのインパクト。大舞台での活躍を十分に予感させるものだった。
そんな話をトレーナーに伝えると「当時の仕上がりは“これなら何とか使えるな”ってところ。本当によく頑張ってくれました」と予想外の返答が…。
あれだけの走りを見せて、完調手前どころか、“出走態勢ギリギリ”だったとは…。末恐ろしい馬である。
「僕は古馬になってからの馬だと思っています。そういう現状で、これだけ走れているのだから大したものですよ。とはいえ、だんだんと体は大人になってきました。人間も成長するにつれて、ポチャッとした部分が抜けて、スカッとしてくることがあるでしょ。ああいう感じですかね」
完成はまだまだ先ながらも、順調に少女から大人への階段を上っているようだ。
もちろん、現状はまだ課題もあり、「
桜花賞(5着)を使って少し行きたがる面が出てきた」とか、「本質的な体力がまだつききっていない」といったネガティブな部分も今野調教師は包み隠さず教えてくれたのだが…。圧巻だった初戦で受けたインパクトからすれば、この
オークスでGI戴冠となっても驚けない。
予想合戦では欲張るだけ欲張って◎
スライリーとしたが、この
アールドヴィーヴルも▲で最大限の警戒を払っておきたい。
(栗東の馼王野郎・西谷哲生)
東京スポーツ