不動の大本命馬として第71回
安田記念(6日=芝1600メートル)で通算6つ目のGIタイトルに挑む
グランアレグリアにとって、最大のカギが中2週のローテーションにあることは誰しもが思うところ。昨年はやはり初の中2週だった
アーモンドアイが
グランアレグリアに敗れた前例が重なることで、“負けるとすれば…”の最も簡単な理由付けとなるからだ。ちなみに
ヴィクトリアマイル勝ちの後に左前脚の蹄球部を気にしていたとの情報も流れてはいた。
グランアレグリアにとって、3歳春の
桜花賞(1着)から
NHKマイルC(4位入線→5着降着)の中3週がこれまでの最短ローテ。この
NHKマイルCの敗戦もネガティブ材料に輪をかけるなど、能力以外のところで不安材料を探せば、それなりにはあるのだが…。
「もともと(速い追い切りは)やらない馬。中2週だし、何もやらなくても大丈夫なくらいだよ」と当の藤沢和調教師は余裕の表情を見せている。
その繊細な気性も考慮されて、
グランアレグリアはデビュー当時から速い時計やビシビシ追うといった強い負荷をかける調教とは無縁だった。もともとが泰然自若の名伯楽。レース間隔が詰まるからといって、手を替え品を替えといったヤボなことをするような次元のトレーナーではない。
「走る馬は放っておいても勝手に走る。それを人間のほうが“大きいレースの前だから”と、過度な調教を課してしまってはダメなんだよ。大切なのは状態の見極め」
これまでに藤沢和調教師の口から何度となく出た言葉だ。今回の
グランアレグリアの調整を見ていると、その言葉の真意に改めて気付かされる。
「いつもはレースを使ったら、間隔を空けて(牧場とかで)のんきに過ごしたりもしていたが、今回は(厩舎に)置いていたから調整自体も楽は楽なんだ。昨秋は馬に余裕があって慌てたよ。
スプリンターズS(1着)では前日もやった(坂路で異例の4ハロン54.5-12.9秒)くらいだったから。あのころは体が増えっぱなしだったけどな。今は陽気も良くて、ちょうどいい体重だな」
確かに昨秋の
スプリンターズSは夏を挟んだ休養明けとはいえ、12キロの馬体増。さらにさかのぼると、
安田記念(1着)が6キロ、
高松宮記念(2着)も12キロ増で、トータルで30キロ増やした計算になる。ゆえにレース間隔が短いうえに、手元に置いて日々体調の変化にも対応できる今回を、藤沢和調教師が「調整は楽」と言うのは紛れもない本音なのだろう。
2日の最終追い切りは坂路で4ハロン53.6-12.5秒を馬なりで。直前追いを坂路にしたのは昨春の
高松宮記念以来で、今回は“静”に徹した調整であることは間違いない。ただ、大一番の前だからといって、トラックでの強い追い切りに固執したりしないことこそが、藤沢和調教師の真骨頂なのだと痛感した次第である。
(美浦のイレブン野郎・立川敬太)
東京スポーツ