「
マーメイドS・G3」(20日、阪神)
2021年も波乱の決着となった。10番人気の伏兵
シャムロックヒルが最軽量ハンデ50キロを生かして逃げ切り勝ち。デビュー11年目の藤懸と人馬そろっての重賞初V。19年覇者
サラスとのきょうだい制覇を成し遂げた。2着に51キロを背負った5番人気の
クラヴェルが入り、軽ハンデ馬のワンツー。1番人気の
ソフトフルートは8着に敗れた。
苦節11年がついに実った。荒れる牝馬重賞を制したのは藤懸騎乗の
シャムロックヒル。人馬ともにタイトル初奪取となった。
戦前から逃げると決めていた鞍上に迷いはなかった。「長く脚を使うと思ったので、1枠1番が当たった時点でハナに行こうと決めていました」。絶妙なラップを刻み続けると、直線では並ばれてから二枚腰を発揮。最後は外から猛追する
クラヴェル騎乗の横山典と顔を見合わせてゴールした。首差の接戦を制し「ずっと先頭だったので“何も来ないでくれ”と無我夢中だった。外と離れ過ぎていて分からなかったけど、(掲示板に)1着と上がっていて実感しました」と安堵(あんど)の表情を浮かべた。
21年は
オークスでG1初騎乗。16番人気の
ハギノピリナで3着に好走し、注目を浴びた。デビュー11年目を迎えても熱心な姿勢と、周囲への感謝の心は変わらない。「僕が重賞を勝つなんて誰も思っていないと思うけど、感謝の気持ちでいっぱいです」と笑顔がはじけた。佐々木師も「中途半端な競馬が一番嫌なんだ。行った時点でどん尻でもいいと思ったよ。気持ちがいいね」と声を弾ませ、腹をくくった騎乗をたたえた。
この日は父の日。
キズナがダービーを制した時と同じ1枠1番で、娘が最高の結果を出した。父も管理したトレーナーは「最後に盛り返したのは
キズナの根性。
キズナが父になって、僕にプレゼントしてくれたね」と表情を崩した。最も多くの産駒を預かり、最も勝ち星を挙げている中でも格別な1勝となった。次走については「クイーンS(8月1日・函館)に行こう」とその場で決断。ようやく花開いた人馬が、自信を胸に北の地へと歩みを進める。
提供:デイリースポーツ