13頭立てとなった今年の
宝塚記念。
クロノジェネシス、
レイパパレというGI牝馬が上位人気を占めそうだが、1998年も
エアグルーヴ、
メジロドーベルというGIウイナーがタイトル奪取を狙い、牙を研いでいた。そのレースを鮮やかに逃げ切ったのが
サイレンススズカだ。待望のGI初制覇となった当時のレースを振り返る。
■破竹の5連勝でGIタイトルを奪取
フルゲート18頭に対し出走馬は13頭にとどまったものの、4連勝で前走・
天皇賞(春)を制した
メジロブライト、
武豊騎手が手綱をとる女傑
エアグルーヴ、前年の
グランプリホース・
シルクジャスティスなどが参戦。他にも前走の
鳴尾記念で
エアグルーヴを降す大金星を挙げた
サンライズフラッグ、2冠牝馬
メジロドーベルなど個性豊かなメンバーが顔を揃えた。
その中で、1番人気に推されたのが
サイレンススズカ。4歳時は
弥生賞でゲートに潜り外枠発走になるなど気性面の不安定さが目立ったが、大逃げ戦法に開眼したこの年は、
バレンタインSから
金鯱賞まで破竹の4連勝。特に
金鯱賞では前半1000m58.1秒のハイペースで飛ばすと、直線でも余裕の手応えで一人旅。2着
ミッドナイトベットに1.8秒差をつけるという、ファンの度肝を抜くパフォーマンスをみせつけていた。
宝塚記念での
サイレンススズカの単勝オッズは2.8倍。ベストよりもやや長い2200m、左回りに比べてパフォーマンスが落ちる右回り、そして乗り替わり(主戦の
武豊騎手は先約のあった
エアグルーヴに騎乗)などいくつかの不安要素を抱えており、新星誕生への期待と馬券的な不安が入り混じる、微妙なファン心理を表した数字だったと言えよう。
レースは2番人気の
メジロブライトがゲート内で暴れて外枠発走に。ざわつく場内の雰囲気に動じることなく
サイレンススズカは13番枠から好スタートを切る。サッと先手を奪うと、前半1000m通過は58.6秒。
メジロドーベルが2番手で続き、
エアグルーヴは中団から、
シルクジャスティス、
メジロブライトは後方に待機する。
サイレンススズカは、いつものような飛ばす競馬ではなく、中盤でペースを落とし息を入れたため、追走する各馬も早めに進出を開始。4コーナーで後続との差が3馬身まで縮まると、直線では、外から早めに動いた
ステイゴールド、さらには馬場の真ん中から
エアグルーヴが猛追する。
しかし内から
サイレンススズカがもう一度脚を使うと、馬体を合わせることなくリードを保ったままゴール。4度目の挑戦で、念願のGIタイトルを手中に収めることに成功した。
前出の
金鯱賞、そして
エルコンドルパサー、
グラスワンダーを子供扱いした
毎日王冠など、
サイレンススズカには印象的なレースが多いため、この
宝塚記念をベストレースに挙げるファンは少ないかもしれない。
しかし、改めて戦歴を振り返れば、個性派の人気者から現役最強の座を確かなものにした、非常に意味のある一戦だった。
今年の
宝塚記念では、強い逃げ馬が現役最強馬に挑戦する。23年前と同じように、最強位を継承する戦いになるのだろうか。
(※馬齢は旧表記を使用)