ゲリラ豪雨が止んだと思ったら、また雨が降りはじめた。稍重のコンディションのもと、第57回
七夕賞の出走馬16頭がゲートを飛び出した。
4番枠から出た
戸崎圭太の
トーラスジェミニは速いスタートを切った。軽く気合をつけられそのまま先頭に立つ勢いだったが、内から上がってきた
ロザムールと並走する形になった。戸崎も、
ロザムールの
ミルコ・デムーロも、どうしてもハナに行きたいという姿勢は見せず、手綱を抑えている。
しばらくそのままの状態がつづいたが、
トーラスジェミニは、正面スタンド前で半馬身か首ほど
ロザムールを先に行かせ、2番手で1、2コーナーを回って行く。
「ここを目標にスタッフがいい仕上げをしてくれて、状態はとてもよかったです。勢いがついたらハナに行こうと思っていたのですが、内から来た馬がいたので、あとはリズム重視で行きました」と戸崎。
向正面に入っても先頭は
ロザムール。
トーラスジェミニは半馬身ほど遅れた外につけている。
先頭から最後尾までは10馬身ほどか。1番人気の
クレッシェンドラヴは中団につけている。
1000m通過は1分0秒8。平均ペースといったところか。
3コーナーに入り、ラスト600mを切ったあたりで
トーラスジェミニが内の
ロザムールに並びかける。
トーラスジェミニの戸崎はそこから後ろを引きつけるのではなく、仕掛け気味に進み、スパートのタイミングをはかっている。そして、4コーナーを回りながら先頭に立ち、少しでも芝の状態のいい馬場の真ん中に出して、直線に向いた。
トーラスジェミニが先頭のままラスト200mを切った。内の
ロザムールが食い下がり、なかなか突き放せない。
ラスト100m付近で、戸崎が初めて左ステッキを入れた。
その叱咤に応え、
トーラスジェミニが2着の
ロザムールを首差で抑え、先頭でゴールを駆け抜けた。
同馬にとって、これが初めての重賞タイトルだった。同時に、管理する小桧山悟調教師にとって、嬉しい
JRA通算200勝目となった。
「ペースもゆったり行けたので、手応えはありました。距離は少し心配でしたが、最後、一杯になりながらしのいでくれたのは、馬の能力だと思います。今日は馬に感謝したいと思います」
戸崎はそう謙遜するが、強豪が揃った前走の
安田記念で5着に持ってきたのも彼だった。勝負どころで後ろが来るのを待つより、後続に脚を使わせてこそ、この馬の力が生きることを読み切っていたのだろう。さすがの手綱さばきだった。
(文:島田明宏)