長らく日本の競馬界をけん引した
ディープインパクトの後継種牡馬として大きな期待を集めているのが
キズナ。古馬長距離路線の大将格
ディープボンドから、マイル路線の
マルターズディオサ、ス
プリント路線の
ビアンフェまで、幅広い条件で活躍馬を出している
キズナ産駒は、現2歳世代もすでに7頭が勝ち上がり。さらなる飛躍を遂げそうなムードにある中で、記者が大いに注目しているのが
新潟2歳Sに出走予定の
サイードだ。
実は母系も優秀で、
アイビスSD連覇など短距離路線で良績を残した
ベルカント、
アーリントンCを制した
イベリスなど、これまで
母セレブラールが送り出した産駒は
サイードを含め7頭すべてが勝ち上がりを決めており、またその7頭すべてが角田厩舎所属だ。
サイードの調教パートナーを務める高野助手は小倉芝1200メートルでの初陣Vを「(福永)ジョッキーが馬の後ろに入れてロスなく運び、直線で抜け出す、お手本のような競馬を教えてくれましたね」と内容を高く評価。その抜群の競馬センスは戦前から感じ取っていたという。
「入厩当初にまたがった時は緩くて体がなじむのに時間がかかる感じ。ウオームアップでも体を使い切れていなかったんですよね。それがいざ追い切りになると、1本目から余裕のある動きを見せてくれて。実戦でより力を出せるタイプだなと思いましたね」
初戦に向けての1週前追い切りには福永が手綱を取り、ウッドで厩舎の古馬エース格・
マスターフェンサーとの併せ馬を敢行。格上馬の追撃を鮮やかに振り切り、先着を果たしていた。新馬戦快勝は陣営の“想定通り”といったところか。
セレブラール産駒が短距離中心に使われてきたのは気性の影響が強かった。特に
サイードの全姉である
エレヴァート、
ヘネラルカレーラは、そのテンションの高さから厩舎スタッフも手を焼く存在なのだという。対照的にこの
サイードは「調教でもガンガン行く感じがなくてコントロールしやすい。一本調子のス
プリンターとは違う感じかな。調教、実戦を見てもスピードに乗って長く脚を使えるタイプ。新潟マイルの適性も高そうですね」と高野助手は距離延長を不安材料とはみていない。
新潟2歳S(29日=新潟芝外1600メートル)に向けた1週前の芝併せ馬でも楽々と追走先着。「馬場が悪くてキック
バックを受けながらでしたが、一旦加速しだしたら前に一気に取りついてくれた。まだ壁がなくなるとフラフラするところを見せたりはしますけどね。そのあたりはまだまだ良化の余地が大きいってことなんでしょう」と高野助手はさらなる進化に期待を寄せている。
成長途上でも抜群のセンスを見せている
サイードが“完全体”となった時、どれほどのパフォーマンスを発揮してくれるのか。
新潟2歳Sはまだその序章にすぎない。
(鈴木邦宏)
東京スポーツ