藤原英調教師は独特の言語感覚を持っている。トップステーブルを束ねるドンに話を聞きにいくのは今でもめちゃくちゃ緊張するが、不思議と楽しかったりもする。らしさ全開のコメントを聞けると、冷や汗が何とも言えない高揚感に変わっていくからだ。
そんな敏腕トレーナーから新たな“語録”が飛び出したのは先週のこと。
シャフリヤールが
神戸新聞杯(26日=中京芝2200メートル、
菊花賞トライアル)に向けての1週前追いを終えた後のことだ。「人間に置き換えれば分かりやすいやろ」と前置きしながら、春からの成長について「中学生が高校生になったような感じやな。言うことを聞くようになって、調整が楽になってきた。そこから不良になるのか、優等生になるのか。そこは親のやり方次第。うまく導いてやらないと」と話してくれた。
これは
シャフリヤールの“現在地”を知るうえで非常に分かりやすい例えだと思う。意図をより鮮明にするため、文脈の前後を福永騎手のコメントで補足するとこうだ。「体がたくましくなっている一方で、前進気勢が春よりも少し強くなってきている。作り方次第ではマイルから2000メートル(向き)になる馬ではあり得るが、そのあたりはずっと仕込んできているからね」
芝・ダートの短距離で活躍した
ドバイマジェスティを母に持つ血統。全兄
アルアインとは違うタイプというのが陣営の共通認識だが、年齢とともに母系の影響が徐々に出てくる。可能性のひとつとしてはない話ではないだろう。しかし、西の名門・藤原英厩舎には成長に合わせた馬づくりで、これまで何度も
ビッグタイトルを獲得してきた実績がある。
「この馬は心技体の元値が高い分、詰め込んでガンガン勉強させるようなことはしなくてもいい。だからといって、怠けていてはポテンシャルを発揮できない。そのへんの
バランスが重要やな」(藤原英師)
ゆえに
神戸新聞杯で求められるのは結果はもちろん、次に向けてどんな競馬ができるか。ただ現時点で、その“次”がどこなのか正式なアナウンスはない。ラスト1冠の
菊花賞なのか、それとも…。第88代ダービー馬の今後を占う意味で見逃せない、秋の始動戦がいよいよ間近に迫ってきた。
(栗東の馼王野郎・西谷哲生)
東京スポーツ