昼前に降り出した細かな雨は、
天皇賞・秋の出走馬がパドックに現れたときには傘が不要なほど弱まり、芝コンディションは良のままゲートが開いた。
元来はスタートの上手い1枠1番の
コントレイルはゲートを出てからいつのもようには進んで行かず、中団からのレースとなった。
5番枠から出た
横山武史の
エフフォーリアは、速いスタートを切った。
「スタートがよかったし、器用な馬なので、余計なことはせず、馬を信じて乗りました」と横山。
そうして流れに乗った結果、すぐ前に
グランアレグリアがいた。
グランアレグリアも好スタートを切り、楽な手応えで2番手につけて折り合っている。
カイザーミノルが引っ張る流れは淡々としたものになり、1000m通過は1分0秒5。
エフフォーリアは、好位5番手につけて脚を溜めた。
「道中は理想的なポジションでした。インにはこだわらず、多少外を回ってもいいと思っていました」
横山はそう振り返る。
コントレイルは
エフフォーリアの1馬身半ほど後ろにいる。
カイザーミノルが先頭のまま直線へ。
ラスト400m付近で
グランアレグリアが馬場の真ん中から先頭に立ち、後ろを突き放しにかかる。
その外から
エフフォーリアが猛然と脚を伸ばす。さらに外からは
コントレイルも追い上げてくる。
ラスト200m付近で覇権争いは先頭の
グランアレグリア、2番手の
エフフォーリア、3番手の
コントレイルに絞られた。
エフフォーリアがラスト100m付近で内の
グランアレグリアをかわして先頭に躍り出た。
外から追い込んだ
コントレイルはどうにか
グランアレグリアをかわしてゴールしたが、その1馬身前に
エフフォーリアがいた。
最後は、古馬より2kg軽い
エフフォーリアの56kgの斤量も生かされた。
勝ちタイムは1分57秒9。
勝つときはすべてが上手く行くというが、馬を信じ、馬のリズムを最優先にして乗ったら前後にラ
イバルのいる絶好のポジションとなり、横山は、先週の
菊花賞につづく2週連続のGI制覇を果たした。同時に、騎手による父子3代天皇賞制覇という偉業も達成した。
ロスのない競馬をした
グランアレグリアの敗因はやはり距離か。
コントレイルは、序盤の位置取りが
エフフォーリアより後ろになったことが響いた。
(文:島田明宏)