今も昔も馬券のキモは「条件変更」である。芝からダート、中距離から短距離、右回りから左回り、長距離輸送から短距離輸送(前日輸送から当日輸送)、二流騎手から一流騎手…。もっとも、それらには「狙い澄ました一戦」もあれば、「苦肉の策」もあり、あるいは単なるオーナーからの“喜ばざる要請”もあるだろう。
何はともあれ、新たなるチャレンジなのだから陣営のコメントは前向きにならざるを得ず、そうであるからこそ、言葉は悪いが、それを真に受けてはいくらお金があっても足りなくなる。
かつての当方のお気に入りに
ルミナスウォリアーという馬がいた。デビューから往々にして間隔を空けて使われ、3勝クラスを勝った後に勇躍向かった
七夕賞では2番人気の支持。ここで課題になったのは中2週というタイトなローテだったが、「力をつけてきた今なら大丈夫」といった感じのコメントが出され、我が目にも稽古の動きは休み明けを使ってグンと良くなっているように見えた。ところが結果は8着惨敗。結局、
ルミナスウォリアーは翌年の
函館記念で重賞初Vを果たすのだが、当時は4か月ぶりの実戦と終生、鉄砲巧者は変わらなかった。
さて、今週の
中山記念(27日、中山芝内1800メートル)では定年となる2人の調教師の管理馬がやはり不気味だ。まず藤沢和厩舎の
コントラチェックは久々の1800メートルに替わるのが大きなポイント。今回は
フラワーC勝ちした舞台であり、
中山牝馬S予定を繰り上げて? 参戦してきた経緯も見逃せまい。とはいえ、同型馬の
パンサラッサがいるだけにそう簡単に事が運ぶとは思えず…。かといって同僚の
ゴーフォザサミット、
レッドサイオンにも過度な期待はかけられない。
そんなわけで高橋祥厩舎の
カラテのほうに目を転ずると、これもこれで「1800メートルでは勝ち鞍なし」ではさすがに陣営から威勢のいいコメントが出ても、前出の
ルミナスウォリアーのようにうかつには飛びつけまい。
ところが先週、「距離に関してはとりたてて気にしていないんだよ。昨秋の
京成杯AH(5着)の後に天皇賞を視野に入れていたほどだから。ただ、爪の不安で使えなかったんだけどね」と師は振り返っていた。これは聞き捨てならない。
実際、前走の
東京新聞杯(3着)はスタートからずっと鞍上の手が動いていたように、いかにもマイルは忙しかった。いまや6歳。年齢的なズブさが出てきているのは間違いない。このたびの路線変更は決して苦肉の策ではなく、いわゆるひとつの既定路線。戦力アップにつながる公算大だ。
週末のコメントはこの厩舎特有の淡々としたものになるだろうが、これにだまされてはいけない(笑い)。ここで“隠れ中距離馬”のベールを脱ぎ、
大阪杯に向かうのではないかと馬券野郎はにらんでいる。
(美浦の妄想野郎・虎石晃)
東京スポーツ