美浦担当の競馬記者になって、はや9か月。トレセンでは梅が咲き誇り、苦しめられた雪の季節がようやく終わりつつある。午後の陽気が気持ちいい時期ではあるのだが、春一番に乗って飛んできたのがスギ花粉だ。宿泊している寮の裏手は杉林。黄色くよどんだ空気に頭は重くなり、くしゃみが止まらない。新たなつらい日々の始まりである。
パナソニックが2020年に実施した調査では、この国民病によるパフォーマンス低下で、一日あたり2215億円相当の経済損失があるのだとか。取材がはかどらないのは仕事ができないからではなく、きっと花粉症のせいだ。馬券が当たらないのも、きっとそのせいに違いない。
そこで疑問に思ったのが馬も花粉症になるのか、ならないのか。この時期、不思議なほど調子が上がらない馬がいたら、それは花粉症が原因なのでは…。あらかじめ花粉症の馬を把握しておけば、馬券で一発逆転が狙える?
早速、美浦の関係者に
ローラー取材を敢行したのだが、結論から言えばよくわからないらしい。「この時期はヘッドシェイクが増える」という声もあるが、「人間ほどひどいアレルギー反応を示す馬はいない」というのが大方の意見。ああ…やはり、勝ち馬探しに近道はない。地道に取材を重ねていくしか…。
大儲けとは言わないまでも、妙味がありそうなのは
スプリングSの
アライバル。
京成杯では1番人気に推されたものの、伏兵
オニャンコポンの0秒4差4着と期待を裏切ったわけだが…。
凡走には確固とした理由がある。前走は休養明けで16キロ増。栗田調教師は「気性の問題ですぐカーッとなるので、単走ベースで控えめに調整してきたからね。結果としてはやや太め残りだったのかもしれない。地力があるので4着には来てくれたが、競馬自体もチグハグな印象だった」と振り返る。
肝心の今回は「体が絞れてきたうえに、前走と違って落ち着きも出てきたし、脚元も問題ない」と準備万端。
ハービンジャー産駒らしく大跳びで、エンジン点火がワンテンポ遅れるのは気になるところだが、鞍上は引き続き名手
C.ルメール。前回の競馬を糧にしてト
リッキーな中山も攻略してくれると信じている。
アライバルがきっちり
皐月賞の出走権利を獲得し、こちらは競馬資金をきっちり加算。花粉症に耐える記者に、それくらいの幸せがあってもいいのではないか。
(美浦の花粉症野郎・垰野忠彦)
東京スポーツ