レイパパレは昨年暮れの
香港カップ(6着)を除いて、これまですべてのレースで1か月以上の間隔を空けながら使われてきた。もともと450キロにも満たない小柄な牝馬だし、昨秋は折り合いにも課題を見せていたのだから、レース間隔をゆったり取るのは当然といえば当然。そんな馬がキャリア最短となる中2週の
大阪杯(4月3日=阪神芝内2000メートル)参戦に踏み切ったのはなぜなのか? その経緯を管理する高野調教師はこう話す。
「もともとは使った後に香港遠征を予定していたんですが、直前になってルール上、行けないということになったので…。次走に関してはまったく未定の状態で
金鯱賞を使いました。その後すぐ牧場に出して、馬の様子を見ながら次走を検討。回復すれば
大阪杯という感じで見ていて、一定の回復が確認できたので出走を決めました」
その
金鯱賞(2着)は
ジャックドールがよどみない流れを刻んでタフなレースに。その中でしっかり走り切った分、心身のリカバリーがポイントだったと振り返る。
「バリバリにフレッシュとまではいかないけど、“全然問題ないな”という感触ですね」
与えられた条件の中で、いかに
ピークに持っていくか。百戦錬磨の指揮官は「欲を言えば、休み明けの時のような
ギラギラした感じが理想ですけどね。そうではない中で、どうやってレース当日にギラッとした状態まで持っていけるかが勝負かな」と腕をぶす。
もちろん、連覇への調整イメージはすでに出来上がっている。
「一般論としては、小さい馬ですから(体を)大きくしていったほうがいいのでしょう。生物としてはそれでいいと思いますし、食いの細かった3歳夏ごろまでは僕もそういうバイアスを持っていました。
クロノジェネシスだったりは、そういった成長を見せたいい例ですよね。でも、
レイパパレに関してはちょっと違うタイプなのかなと。一般論が当てはまるとは思っていないんです」
無傷の6連勝で
大阪杯を制した当時も
レイパパレの馬体は細く映った。そこから一戦ごとにパンプアップ。馬体は見栄えを増したにもかかわらず、
宝塚記念3着、
オールカマー4着と結果は伴わなかった。
レイパパレにとっては馬体の充実が好材料にはならなかったのだから競馬は奥が深い。
おそらく、
レイパパレは細く見えるくらいのほうが走る。故に、ここ2戦のマイナス体重はいい傾向。しかし、その
シルエットは究極仕上げの“副産物”でもあるとトレーナーは言う。
「カイバを減らすとか、調教をめちゃくちゃやるとか、そういうことをするわけじゃないんです。今のカイ食いと調教の
バランスでいったら、
ナチュラルでいい。そのうえで今の
シルエットのまま行きたいなと」
そして、もうひとつのポイントである折り合いについても高野調教師は「前走はもうこの馬としては十分だったんじゃないかなと。ちょっと前だと(1000メートル)59秒でも(折り合いが)きつかったと思うんですけど、そこであれくらいの走りができたことは収穫だった」と好感触を伝える。
この精神面の成長は香港遠征が大きかったようで「馬も記憶力の優れた生き物ですから、経験を獲得することができる。飛行機に乗って、違う環境で競馬をして、ああいうハードなシチュエーションで精神がたくましくなりました」。
そう、心技体が研ぎ澄まされたのが今の
レイパパレ。その走りには“鬼が宿る”に違いない。
(栗東の馼王野郎・西谷哲生)
東京スポーツ