セール出身の高額馬の出走は当然、注目を集める。昨年11月の東京芝2000メートル新馬戦はその典型例だ。レースを制した
トーセンリョウは2020年のセレクトセール(1歳)で2億円、2着
ダノンギャラクシーもまた19年の同セール(当歳)で2億9000万円の高値を付けた馬だった。2頭の税込み価格の合計は5億3320万円となり、当時は“5億円対決”として話題を呼んだ。
その勝ち馬
トーセンリョウが1勝クラス・
山吹賞(4月3日=中山芝外2200メートル)でようやくデビュー2戦目を迎える。初戦から5か月ぶりの実戦。クラシックが念頭にあって当然の時期に、連戦できなかったのにはやはり相応の訳がある。
「現状はまだレース後のダメージが激しいんだ。屈腱部に疲れが出るんですよね。上の
トーセンカンビーナも脚部不安に泣くところがあったし、血統的な事例も参考にしている。今の時期に脚部不安になると後々にダメージを残すことになるから、疲れが抜けきってから立ち上げるよう万全を期したんだ」
全兄
トーセンカンビーナは2歳夏にデビューして2戦目に勝ち上がったものの、その後はしばらく歯がゆいレースが続いた。3歳秋になって1、2勝クラスを連勝し、4歳の春を前にオープン入り。加藤征厩舎に転厩したのはその年の夏だった。6歳になった今でも重賞で好勝負を続けている現状から、やはり
トーセンリョウもおくてのタイプだと考えられる。
もっとも、立ち上げこそ慎重だったが、軌道に乗ってから、ここに至るまでの調教では確かな素質を改めて示している。1週前追い切りでは新コンビを組む田辺を背に南ウッド6ハロン82・2-12・1秒を馬なりでマーク。障害オープンを相手に楽々と半馬身先着を決めた。
「本来ならもっと負荷を強めたいんだけど、馬が動けているからその必要もないかな。5か月のレース間隔がいい休養になって、意図的に太らせなくても20キロ増えた。今は馬の状態に合わせた仕上げをしています。もちろん、クラシックに乗せたい気持ちもあるけど、間に合わせようとするのではなく、“間に合えばいいな”と」
クラシックへの出走はもちろん、この世界では人馬にとって最重要課題のひとつであり、夢でもある。ただし、固執するあまりに無理がたたり、当面の目的こそかなったものの、後々に大成できなかった事例は枚挙にいとまがない。加藤征調教師にもそんな苦い経験があるという。
目先の1勝にこだわるのではなく、馬の個性に合わせた仕上げと戦略の延長線上に、結果としてクラシック出走がかなえばまさに理想的。果たして
トーセンリョウは春に大舞台に立つことができるのか。それはこの
山吹賞の走りにかかっている。
(立川敬太)
東京スポーツ