アスクビクターモアを初めて見たのはデビュー前の昨年6月2日、初となるウッドでの追い切り時だった。抜群の手応えのまま、あっさり同厩の先輩を突き放した加速力に衝撃を受け、当時はまだ担当厩舎ではなかったが、田村調教師に話を聞きにうかがった。
「まだ高校1年生ぐらいで体も緩いけど、それでいて1本目から、これだけ動けてしまうんだから能力は相当だよ」。師と初めて会話できたうれしさと同時に、追跡者として
アスクビクターモアがどんな成長を遂げていくのかを見守っていきたいと思ったほど。
その時から9か月の時を経て、
弥生賞を勝利した時は馬券も含め追いかけ続けた喜びで胸が熱くなったが、それ以上にうれしかったのは、「デビュー前からずっとこの馬のことを応援してくれていたね。ありがとう」と田村調教師に温かい言葉をかけていただけたことだ。
さらに「東京のアイビーS(3着)の後、無理せず、適性の高い中山の自己条件から使ったことが結果的に良かったし、オーナーも理解していただけてそこから歯車がしっかりかみ合った。まだトモ高でキ甲が抜けていないぶん、これからもっと良くなってくるよ」との言葉に、
皐月賞(17日、中山芝内2000メートル)でも本命候補にしようと決めていたが…。
その思いが揺るぎないものとなったのが、短期放牧を挟んで実質1本目となるウッドの2週前追い切り。単走で鞍上の手綱は全く動かないままだったが、5ハロン65.6-11.6秒の好時計を馬なりで楽々とマーク。
追い切り後に田村調教師は「レースではまた違った要素も絡んでくるし、常に結果につながるものではないけど」と前置きした上で、「2週前なのでやりすぎないように気をつけたが、ただ乗っているだけでこれだけの時計が出せるんだから、今の時点ですでに
弥生賞の時より動きは上だし、こんなに短期間で変わってくる馬はなかなかいない。
ずっと魅力のある生徒だなとは思っていたけど、ここまで才能を見せつけられるとうらやましいというか、ちょっとした
ジェラシーを覚えるよね」と語るように、本番を前にさらなる進化を感じられた。
今回は当然、相手も強くなるが、追い切りで騎乗している高木助手は1週前追い切り後、「ゴール後の動きも良かったですし、こちらの指示にしっかり従ってくれる。落ち着きがあって精神的な部分も良くなっていますね。前走は
ドウデュースに最後迫られていましたけど、まだ余力は感じられたし、ペースが速くなった方が折り合いもつきやすくなると思います」と手応え十分。
3戦3勝とコース適性は文句なしの中山。さらなる進化を遂げた走りで、戴冠することを信じて精一杯応援したい。
(美浦の追跡者・松井中央)
東京スポーツ