長距離王決定戦のGI第165回
天皇賞・春(1日=阪神芝外→内3200メートル)は、横山和騎乗の
タイトルホルダー(牡4・栗田)がハナを切って後続をぶっちぎる圧倒V。鞍上はGI初Vが7馬身差の圧勝で、かつ親子3代制覇というド派手な“立ち回り”を完成させた。7馬身差以上の勝利は04年
イングランディーレ以来となる18年ぶり4回目という歴史的勝利劇。その背景にあったものとは。
レースは大方の予想通り、
タイトルホルダーが押してハナに行き、後続を引き離す形。1周目のスタンド前では2番手に7馬身ほどの差をつけて、前半1000メートル通過60秒5の逃げ。道中しっかりと折り合いもついて進んだ。2周目の4角で
テーオーロイヤルが並びかけてきたが、直線で再加速すると、後続を一気に引き離す独走態勢。そのまま大きく差をつけて古馬長距離の頂点に立った。
初のGI戴冠となった横山和は、「とてもうれしいです。返し馬から雰囲気の良さを感じていて、
タイトルホルダーと仲良く走ろうと思っていました。初めてGIを勝てたこともうれしいけど、
タイトルホルダーと勝てたことがなによりうれしい」と独特のニュアンスで笑顔を見せたうえで、こうレースを振り返った。「前走の
日経賞(1着)の時にしっかり出していっても折り合いに不安がないことを確認できていたし、(道中は)馬も分かっていて息を入れてくれた。直線に入ってもしっかりとしていたし、まず大丈夫だろうと思っていました」
栗田調教師は「まずはホッとしました」と安堵の表情で語り、「ジョッキーも馬を信頼して逃げてくれ、いいリズム、いいラップで運べていた。なんとか押し切ってくれないかと思っていました。直線では後続も手が動いていたし、最後は安心して見ていました。スピードを持続できるスタミナがあるし、初めてのジョッキーのGI勝利に立ち会えて良かった」と笑顔を見せた。
雨の影響もあり、終日稍重での施行だったこの日の芝。見た目には内側がかなり荒れていたものの、実際には内が止まらず、外を通った馬には厳しいレースが続いた。本来、16番枠からハナに立つには前半脚を使うことになるのだが、横山和は「スタートは上手な馬だし、この枠も特に気にしてなかった」。
タイトルホルダーの能力に全幅の信頼を寄せていた。これが一番の勝因だ。昨年の
有馬記念(5着)、前走の
日経賞と連続で騎乗し、
タイトルホルダーの力に確信を得たからこその迷いない騎乗だった。
この勝利で祖父・富雄、父・典弘に続く親子3代制覇を決めた横山和。レース後、横山典からは「良かったね、おめでとう」と声をかけられたと言い、また、栗田調教師は「自分が乗っているより緊張した。勝って涙が出そうだったよ」と言われたことを打ち明けた。
山田弘オーナーは「
日経賞の前に一頓挫あったけど、そこから驚異的な回復を見せてくれ、今日は最高の状態に持っていってくれた。3世代天皇賞制覇に力を貸せてうれしく思います」。気になる次走については「
凱旋門賞も登録しているけど、
宝塚記念(6月26日=阪神)を使いたいですね」と話した。7馬身差Vの先に見えてきたのは、中距離カテゴリーの制覇、そして日本悲願の仏G1…。ジョッキー、調教師とも「まだまだこれから良くなる」と話す好素材が、今後のGI戦線を引っ張っていくのは間違いなさそうだ。
【親子3代天皇賞春秋制覇】
横山和の
天皇賞・春制覇で“横山家”は親子3代天皇賞春秋制覇の偉業を成し遂げた。春は祖父・富雄元騎手(71年
メジロムサシ)、父・典弘(96年
サクラローレル、04年
イングランディーレ、15年
ゴールドシップ)、和生(
タイトルホルダー)。秋は富雄(69年
メジロタイヨウ)、典弘(09年
カンパニー)、武史(21年
エフフォーリア)。まさに台風の目となっている横山ファミリーの快進撃は今後も止まりそうにない。
東京スポーツ