今は変更になったが、3年前の夏、美浦の取材班になった際、最初に担当となったのが黒岩厩舎だった。配属当初は関係者の生の声を聞けるのが新鮮だった半面、勉強不足もあって独特の言い回しなどが理解できなかったことも多かった。
しかし黒岩調教師に前走の振り返り、中間の状態、レースに向けた取り組みなど、ジョークを交えつつ分かりやすく話してもらい、とても勉強になることが多かった。
担当間もないころに
パッシングスルーが
紫苑Sを制して以降、翌年のニュージーランドTで
シーズンズギフトが2着し、
リフレイムがオープン入りするなど近年は牝馬での活躍が目立っている。
さらに昨年の阪神JFでは、
ラブリイユアアイズが2着善戦。さらなる飛躍を期待されたものの
桜花賞でノド鳴りを発症し、長期休養を余儀なくされた。そのバトンを受け継ぐように頭角を現したのが
ルージュエヴァイユ。
昨年末のデビュー戦では
エフフォーリアの半弟で断然人気の支持を集めた
ヴァンガーズハートをゴール寸前で捕らえ、続くデイジー賞でも先行馬2頭が押し切り寸前の流れを、抜群の切れ味で一気に差し切って一躍
ヒロイン候補へ。
フローラSでは重賞の壁に阻まれ5着だったが、道中は内で動けず直線も前が開かずに脚を余したレースぶりから実力通りでないことは明らか。それだけに前走後、それほど間を置かずに黒岩師が
オークス(22日=東京芝2400メートル)出走を表明した際は、ヨシッと思ったほど。
唯一の気がかりは中3週と間隔が詰まっている点だったが、1週前追いの併せ馬の動きから全く問題ないと確信。追い切り直後、黒岩師に話をうかがうと「
フローラSからしっかり回復したことで、1週前としてはしっかり時計も出せましたし、反応も良かったですね。
続戦でも気持ちの高ぶりがないですし、操縦性も高くなっている。体は多少減るかもしれないけど、カイバ食いも特に変わっていないし、パフォーマンスレベルが落ちることはないですね」とこちらの想定以上の答えが。
前走についても「イン前が残りやすい開幕週の馬場のなか、この馬にとって最内枠は力を発揮できなかったけど、初の東京でしっかり脚を使えたことが確認できたし、コースを経験できたことは大きな強みとなる。力を出し切れなかったぶん、余力十分で本番を迎えられますしね」と前向きに捉える。
あとは未知の2400メートルだが、その点についても「体のつくりは軽すぎるかなと思うところはあるが、それは長距離を走る上ではむしろプラス。今はオンオフのつけ方もすごく上手になっているので、2400メートルになるのはよりいいと思います」と手応え十分。
久しぶりにじっくり黒岩師の話を聞けたうれしさと、
ルージュエヴァイユが厩舎のエースとしてさらなる飛躍を遂げてくれることを信じて
オークスでも一票を投じたい。
(美浦の追跡野郎・松井中央)
東京スポーツ