今年で29回目を数えるGIII
函館スプリントS(12日=函館芝1200メートル)で真っ先に思い出すのは私がトレセンデビューした2019年。実に6頭が競走除外となった、いわゆる“グリーンカル騒動”だ。記者生活ひと月未満の身で“被害厩舎”のコメント取りに奔走する貧乏くじを引かされたんだよなあ〜って、すいません、個人的なグチ話からで。
そんなことよりも主役はあくまで馬。今回の
ターゲットは札幌時代の1995、96年の
ノーブルグラス、04、05年の
シーイズトウショウに続く、史上3頭目の偉業へと挑む
ビアンフェである。いや、昨年は東京五輪のマラソン競技開催の影響で久々に札幌競馬場での施行だったから、札幌→函館での連覇となれば史上初の快挙とも言えようか。
ビアンフェといえば、小気味いい徹底先行での勝ちっぷりが爽快な半面、「枠入り不良」の頻度が高いことでも知られている。
スプリンターズSで2年続けてゲート入りをゴネる姿で勇名を馳せ? 昨年は競馬場でのゲート再審査、いわゆる“13R”も課された。果たして
ビアンフェの現在地は? 先週末、函館競馬場への輸送を控え多忙な中、調教パートナーを務める伊藤助手に、お話をうかがうことができた。
「ゲート練習は入念に積んできました。まだやんちゃな部分も残っているけど、5歳になって落ち着きも出てきて、だいぶ改善されてきましたね。今は最終手段として目隠しして先入れしてます。そうすればスムーズ。ゲート裏では落ち着いて回れているので心配ないと思いますよ」
これまで北海道シリーズは4戦3勝、2着1回。うち2勝が
函館2歳Sとこの
函館スプリントSとなれば洋芝への適性の高さは折り紙付き。しかも
母ルシュクルは全3勝を北海道シリーズで挙げ、半姉
ブランボヌールもまた全3勝が北海道、うち2勝が
函館2歳Sと
キーンランドCなのだから、筋金入りの“北海道巧者”としていいだろう。ゲートの不安さえ払拭されれば、あとは自然と勝ち星が転がり込んでくる?
「う〜ん、
ビアンフェは57キロでの出走ですが、3歳牝馬は最小50キロで臨めますから。この差はさすがにしんどいですよ」
最大7キロに及ぶ斤量差の克服。これが連覇への最大のハードルになりそうだ。とはいえ、昨年は56キロで臨み、50キロの3歳牝馬2頭(フィリーズR勝ち
シゲルピンクルビー&
函館2歳S勝ち
リンゴアメ)を一蹴している。ならば今年の
桜花賞3着馬
ナムラクレアも恐るるに足らずという気も。実際、伊藤助手の慎重な語りとは裏腹に、
ビアンフェは栗東坂路で2週前=4ハロン50.7-12.5秒、1週前=51.1-12.4秒の超抜時計を叩き出している。
「2週前は想定以上の時計が出ましたが、それも具合がいい証し。行きっぷりが良くなっているし、動き、息の入りも抜群です。得意にしている北海道シリーズに向けて、しっかりと仕上がってきました」と伊藤助手はデキの良さには胸を張る。
目下の充実ぶりで決して小さくはない斤量差をはね返すことができるのか。記者は今夏も栗東残りを強いられそうだが…。遠くから函館開幕週の熱戦に注目するとしよう。
(元広告営業マン野郎・鈴木邦宏)
東京スポーツ