先週金曜から関東地方はグングン気温が上昇。特に競馬が行われた土日は東京で連日、猛暑日を記録した。灼熱の中、全力で走る馬たちには過酷すぎたのだろう。土曜1Rの2歳未勝利戦を勝ち上がった
スズカダブルは、暑さの影響もあって疲労が著しいため口取りを中止に。
以降のレースでも検量室前では疲労困憊で息を乱し、クールダウンに時間を要する馬が多く見られた。たまりかねた厩舎サイドからはこんな声も聞かれたほどだ。
「お客さんを目の前にすれば、ただでさえ、いつもよりテンションが上がりやすくなるのに…。日陰もないパドックを周回し続ければ、レース前の時点でかなり消耗してしまう。馬券を購入する上でパドックの馬の気配を見ることも大事なのは十分に分かるけど…。せめてこの時期だけはパドックを周回する時間を少しでも短くしてほしい」
太陽が照りつける時間帯に直射日光をまともに浴びながら歩き続けたうえで、レースでも全力疾走するのだから、そのダメージは計り知れず、今後の競走生活にも影響を及ぼしかねない。馬のことを第一に思うのなら、一定の気温を超えた場合はパドックの周回時間を半分にするなど柔軟な対応を願いたいし、それに反対する競馬関係者や競馬ファンは一人もいないと思うのだが…。
今週もそんな危険な暑さが続くことが予想される中、関東エリアの舞台は福島に替わり、本格的な夏競馬に突入する。せめて競馬が行われる土日だけは先週の東京のような酷暑にはならないことを祈りつつ、GIII
ラジオNIKKEI賞(7月3日=福島芝1800メートル)では
ベジャールに注目している。
上半期を終えた時点でも関東リーディングの座を守っている田中博厩舎は記者の担当。好調のおすそ分けをいただくように馬券でお世話になることも多いのだが、週中は調教師自ら調教に乗っていることが多く、直接話を聞ける機会はそう多くはない。
じっくり話が聞けた今回は、それこそ馬券に生かさない手はなかろう。
毎日杯は未勝利勝ち直後の重賞挑戦なのはもちろん、初の関西遠征…。さすがに厳しいと判断したのだが、2着に激走されて「痛恨の抜け」をくらった後だけになおさらだ。
その前走について田中博調教師は「道中で絡まれたところでリズムを崩して終わってしまうかなと心配しましたが、彼なりの根性を見せてくれましたね」と振り返りつつ、「まだ腰が緩くて後ろ脚にいい伝達が送りにくい分、一完歩の中でも無駄のある走りをしているなと思うところはあります。そのあたりがスムーズになれば、もっと良くなる馬ですよ」とさらなる伸びシロを強調していた。
560キロ台の超大型馬だけに小回りの福島に対応できるかも気になるところだが、「これだけ大きいのにスピードと器用さを兼ね備えているので、対応できると思います」。要は今回も“買い”で問題なさそうだ。
多くの競馬ファンが感じている通り“馬質”を考えれば、田中博厩舎の現在の躍進は驚異的。決して馬に無理をさせることなく、その中で的確なレース選択をしているからこその好成績なのだろう。
毎日杯で2着に好走しながらも、あえて
日本ダービーを目指さず、じっくり成長を促された
ベジャールも、この
ラジオNIKKEI賞で秋のさらなる飛躍へ向けた快走を見せてくれるに違いない。
(次週から函館出張野郎・松井中央)