◆第101回
凱旋門賞・仏G1(10月2日、パリロンシャン競馬場・芝2400メートル)
JRA海外馬券発売対象の第101回
凱旋門賞・G1(10月2日)に、栗東・
矢作芳人調教師(61)は
ステイフーリッシュで初挑戦。世界の5つの国と地域で重賞タイトルを手にする“世界の矢作”は、歴史的勝利への意欲を示した。
半世紀も紡いできた思いがようやく動き出す。矢作調教師が初めて
凱旋門賞に触れたのは日本の
メジロムサシが出走した1972年。まだ11歳だった。「映像も何もないラジオ実況。それだけに余計にひかれたんだね。当時は夢というのもおこがましい憧れでした」
あれから50年。2004年の調教師試験合格時に「
凱旋門賞を勝つことが夢」と変わらぬ情熱を口にすると、開業後は海外G1を次々と制覇し、今や「世界のYAHAGI」と呼ばれるようになった。そんなトレーナーが“原点”とも言える一戦に初めて送り出すのが
ステイフーリッシュだ。
海外でも活躍 世界への挑戦が飛躍のきっかけとなった。5着だった昨年末の
香港ヴァーズで騎乗したホーが「スタミナがあって、バテないが、ワンペースだ」と指摘。そこで翌春に先行しやすい海外の長丁場へ矛先を向け、サウジアラビア遠征を馬主の吉田照哉代表に直訴した。思惑通りの走りでサウジに続き、ドバイで重賞連覇。「長い距離をもっと早く使っておけば、と思う。ホーには本当に感謝しています」と振り返る。
壁は非常に高い。「(過去100回で)欧州調教馬以外が勝っていないというところ。そこが一番です」。昨秋に日本馬初勝利で新たな歴史を刻んだブ
リーダーズCの時と同じように、逆境でこそ燃える矢作師らしい
モチベーションを口にしつつ、冷静な分析も忘れない。「向こうの競馬は引っ張り合い。付き合う必要はないし、その点では前に行く馬だと思う」。それは自然と
ステイフーリッシュにも重なる。
米国、中東、豪州、香港でG1を制し、「最終目標」と掲げているのがヨーロッパ。その最高峰に子供の頃から見つめ続けたレースがある。「(定年まで)もう10年を切ったので、そろそろ取りに行かないといけない。今は現実的な目標になっています」。憧れから夢、そして目標へ―。進化を遂げた強い思いが、重い歴史の扉をこじ開ける。(山本 武志)
スポーツ報知