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【京都大賞典】プール調教にたどり着いたウインマイティー 挫折と復活の物語/トレセン発秘話

東京スポーツ
  • 2022年10月05日(水) 18時01分
 話は2年前のオークスにさかのぼる。デアリングタクトの前に立ちはだかったのが赤黒縦じまの勝負服2頭、そうウインマリリンウインマイティーだった。最後はデアリングタクトの爆発的な末脚に屈したものの、後の無敗の3冠牝馬の心胆を寒からしめた2頭の走りに多くの称賛の声が寄せられたことは言うまでもない。特に13番人気という低評価ながら、ゴール前で一旦は先頭に立つ激走で大きな見せ場をつくったウインマイティーには感動すら覚えたほどだ。

 しかし…。それからの3頭の歩みは対照的なものとなった。前述通り、無敗の3冠牝馬として歴史に名を刻んだデアリングタクトは多少の雌伏はあれど、今現在も王道路線で活躍中。ウインマリリン秋華賞こそ大敗を喫したものの、翌年は日経賞オールカマーと2度の重賞制覇を果たすなど、順風満帆な馬生を送っている。

 対照的にウインマイティーには実に2年近い低迷期が待っていた。そう、本稿はGII京都大賞典(10日=阪神芝外2400メートル)に出走する、2020年オークス3着馬の挫折と復活の物語だ。

「どこまでやれるのかと思っていたオークスでしたが、期待以上の走りでした。しびれましたね」

 担当の柴田助手は大激走のオークスを懐かしそうに笑顔で振り返ってくれたのだが、低迷期の話題になると同時に一転、表情を曇らせた。

「結構、使っていましたから。秋華賞(9着)のころには背腰に疲れがたまっていました。それに紫苑S(6着)、秋華賞と他馬にぶつかるような厳しい競馬が続いたのも影響したのかな。なんだか馬混みを気にするようになってしまって…」

 確かに秋初戦の紫苑Sは出遅れて両脇から挟まれる不利を受けていたし、秋華賞は勝負どころで他馬と接触を繰り返す非常にタフな競馬。心身ともに深いダメージを負ったのもうなずける。

「競馬でもそうですが、調教でもとにかく一生懸命走る馬。こちらが思っている以上に負荷がかかり過ぎていたのかもしれない」

 そう考えた柴田助手はウインマイティーに最適な調整方法を探るべく、調教師や他の厩舎スタッフとともに試行錯誤を繰り返す。そして最終的にたどり着いたのがプール調教の導入だった。

「プールを取り入れたことですくみが激減したし、背腰の痛みがなくなって、体調も整いやすくなりました」

 これが身体面だけでなく、精神面にも好影響を及ぼし始めたという。

「日ごろとは違う調整方法で気持ちがリフレッシュする効果があるんだと思います。同時にプールというある種、狭隘(きょうあい)な環境に身を置くことで、馬混みへのトラウマが払拭されることにもつながったのでは」

 まさにそれが実証されたのが、前走のマーメイドSの完勝劇だったのだろう。好位の内にポジションを取ると、勝負どころで馬群が密集してもまったくヒルまず、馬の間を割って出てみせた。

「馬混みに入ったら“やめるのかな”って感じで見ていましたが、馬群を割って出る根性を見せてくれて…。取り組んできた効果が出たのはうれしかったし、本当に精神面が成長してくれました。強い勝ち方で時計も優秀でしたから、身体的にも力をつけてきたんだと思います」

 柴田助手のここまでの苦労が報われた瞬間だった。前走後のリフレッシュ放牧から帰厩後は、連日のプール調教と週1回のポリトラック追いを基本に、この京都大賞典(10日=阪神芝外2400メートル)に備えてきたウインマイティー。この先には統一女王を決するエリザベス女王杯も待っている。そう、ウインマイティーの復活劇はまだまだ序章、これからが本番だ。

(元広告営業マン野郎・鈴木邦宏)

東京スポーツ

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