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斎藤誠師「“得がたい感動”がある仕事」 若い厩舎スタッフ増へ「魅力」伝える

スポニチ
  • 2022年10月19日(水) 05時00分
 慢性的な厩舎スタッフの不足。トレセンが今後、陥るであろう状況に調教師会は強い危機感を覚えている。日本調教師会関東本部業務担当の斎藤誠師は「今はまだ大丈夫ですが、5年、10年後にどうなるか。喫緊の課題と捉えています」と説明。同会の試算によれば、30年からスタッフが不足し始め「1厩舎20馬房12人」の基本スタイルを維持できなくなっていくという。

 主な要因は競馬学校(厩務員過程)の応募人数の減少にある。以前は合格倍率が10倍近くもあった難関試験。しかし、10年には約450人あった応募が今年は約120人まで落ち込んだ。年齢制限、牧場での実務経験年数などを緩和したが、現状では効果が少ない。調教師会は「少子高齢化に伴う生産者人口の減少」による他業種との“若者の奪い合い”が大きな原因と判断するが、「現代の若者の仕事観」と厩舎スタッフのイメージの乖離(かいり)も危惧している。

 斎藤誠師は「確かに厩舎仕事は3K(きつい、汚い、危険)という側面がないとは言い切れません。それでも現場の環境は大きく変わってきています」と話す。休みを取りにくい風潮があった昔とは違い、現在は有休制度の利用率が大きく上昇。ウオーキングマシンの普及で時間と人員が割かれる「引き運動」の負担も軽減している。師は「どこか職人かたぎだった世界がサラリーマン風の働き方に変わってきている」と自身が厩務員だった時代との違いを実感。担当馬がレースで活躍すれば基本給与とは別に進上金を得られる制度もあり、愛馬の大活躍で「進上金だけで家が建った」という逸話も残る夢のある業界だ。

 「まずはこの仕事を知ってもらうことが大切」と話す師。3年前から調教師会ではPR活動を強化。馬術大会への協賛、広告代理店を通じた募集HPの拡充(VRで騎乗者視点の映像を視聴可能)。関西の職業体験施設キッザニアでは、子どもたちが厩舎仕事を疑似体験することもできる。先日、話題になった馬運車の厩舎スタッフ募集ラッピングもその活動の一環だ。師は「トレセンの近くには広くて安い社宅があるし、福利厚生もしっかりしています」とアピールする。

 中山競馬場近くで育ち、調教厩務員時代を経てG1トレーナー(ヌーヴォレコルトで14年オークス優勝)となった斎藤誠師。「私が馬を操れなかったファン代表みたいなもの。まずはやる気、好奇心を持って業界に興味を持って頂きたい。もちろんきついこともある仕事ですが、何より馬を通じての“得がたい感動”がある仕事だと思っています」と経験を交えて魅力を伝える。記者という立場でトレセンに出入りするが、馬の活躍と同じくらいスタッフのドラマに心を打たれることは多い。優秀な人材が業界に流れ、いつまでも魅力ある競馬界で在ることを願っている。(高木 翔平)

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