「1枠が絶対有利」とされるダービーのように、GIによっては馬券攻略法的なものが存在する。国際決戦・
ジャパンC(27日=東京芝2400メートル)は「血統にヒントあり」。こう提唱するのは虎石晃記者。同じ東京GI、
天皇賞・秋との“落差”から、特定の種牡馬の産駒が目立つことを突き止めた。簡単明瞭な
ジャパンC必勝
メソッドが指名するのは“未冠”の大器
ダノンベルーガだ。
ジャパンCは
ハーツクライである。自身も05年に2着しているが、産駒の
シュヴァルグランが16年3着&17年1着、
スワーヴリチャードが18年3着&19年1着。あらゆるカテゴリーで突出した成績を挙げる
ディープインパクトにはかなわないものの、東京の長丁場は
ハーツクライ産駒が幅を利かせている。その一方で、
天皇賞・秋ではハーツ産駒の変わり種
ジャスタウェイが勝ったくらいで3着以内はゼロ(昨年までは)。要するに、2000メートルではその才能を遺憾なく発揮することが困難だが、2400メートルならば一気にパフォーマンスレベルが向上…。それが
ハーツクライの血を引くサラブレッドの「特徴」、あるいは「宿命」である。
それを踏まえれば、今年の
天皇賞・秋で3着とはいえ、ハーツ産駒の
ダノンベルーガが好勝負を演じたのは歴史的偉業と言えるだろう。しかも3歳若駒の、キャリア4戦という頼りない戦績で、だ。直線で大外に持ち出して真っすぐに疾走できた1着
イクイノックスには1馬身ほど先着されたが、前の馬をかわすために内めに進路を取らざるを得ず、蛇行しながらラスト3ハロン32秒8の上がりをマークしたのはある意味勝ち馬以上の中身の濃さだ。やや時期尚早ではあるが、前出
シュヴァルグラン、
スワーヴリチャード以上の器と判断しても差し支えあるまい。
慢性的なトモの不安を抱えている
ダノンベルーガだが、中間も至って順調だ。「天皇賞が上がりの速いラップの勝負になったので、在厩して状態面を見極めてきましたが、常にカイバは完食していましたし、6日から坂路入りを開始できました」と堀調教師が説明したように極限の脚を使ったダメージはなく、13日には坂路で4ハロン54.0秒の時計を出し、1週前の17日にはムーア(レースは川田)が騎乗して6ハロン84.6-67.8-52.0-36.6-11.4秒をマーク。秋初戦をひと叩きされて推進力が増してきており、内面からほとばしる闘志が前面に押し出されてきた。年齢的に今後の成長はまだまだ見込めるとはいえ、それでも完成の域に一歩、近づいてきたのは間違いない。
「3頭併せの3番手からリズム重視で、直線だけギアを入れました。馬なりで集中して走れていたのはいい傾向。無理をせずに時計を出せました。天皇賞後に少し緩めた分、息は若干荒かったですが、調教後の馬体重は497キロとしっかりと回復しています」と指揮官は好仕上がりに満足げだ。続けて「元来メンタルのいい馬で、操縦性に優れており、2400メートルはまったく心配していません」と条件好転を示唆した。同世代の宿敵
イクイノックスが
ジャパンCを回避して
有馬記念へ回っただけにリベンジはお預けとなったが、その分、Vへのハードルはがぜん、低くなったとも。
勝てば、82年ハーフアイスト(米)以来40年ぶり2頭目となるGI未勝利3歳馬のV、98年
エルコンドルパサー&18年
アーモンドアイを上回る最少キャリア勝利記録(6戦目)という快挙に。「過去最高のデキ」×「過去最高の舞台」で臨むハーツの最高傑作にとって、歴史が築いたハードルも踏み台にすぎない。
(虎石 晃)
東京スポーツ