ありがとう、「超えていく王者」。障害で数々の記録を打ち立てたJ・G1・9勝の
オジュウチョウサンはラストランの
中山大障害で6着。全レース終了後には障害馬としては80年
バローネターフ以来、42年ぶりとなる引退式が行われた。
「別れたくない」。8年担当した長沼厩務員が引退式で涙した。師走の寒空の下、見守る1万5000人からも声が飛ぶ。「ありがとう」「お疲れさま」。皆、
オジュウチョウサンという伝説に魅了された。
ついに迎えた引退レース。27戦目のタッグとなる石神を背に11個のハードルを飛んだ。最終向正面、早めに鞍上の手が動き、場内に落胆の雰囲気が漂った。そこから盛り返す。4角外から上がると「オジュウいけっ」。6着だったが、J・G1・9勝を挙げた無尽蔵のスタミナと屈強な精神力を見せた。石神は「大いけ垣を飛んでいつもより手応えがなかった。“もう頑張らなくていいんだよ”と思っていたが、馬は諦めていなかった」と最高のパートナーに感服した。
障害重賞15勝、11歳での
JRA重賞V、そして史上最多計4回の
JRA賞最優秀障害馬選出。数々の記録を打ち立てた。記憶にも残ったのが4年前の
有馬記念。平地と障害で合わせて11連勝し、ファン投票3位で
武豊と
グランプリに乗り込んだ。和田正師は「本当にファンからたくさんの声援を頂いた。オジュウの力にもなったと思う。オジュウに生きる希望をもらったというのを聞いて本当に偉大な馬だと感じました」と最敬礼する。
“まだ飛んでないよ?”。引退式を終え引き揚げるオジュウは何度も止まった。スポッ
トライトに照らされた11歳に再び「ありがとう」の大合唱。石神は「余生を無事に過ごしてほしい」と優しいまなざしを向けた。
《長山オーナー「血を残したい」》
オーナーの
チョウサン代表取締役である長山尚義氏は引退の経緯について、10月
東京ハイジャンプJ9着に触れて「電車の中で小学生が“何でオジュウ負けたんだ”と泣いているのを見て引退を決めた」と語った。「これだけの馬を所有できたことは、オーナー冥利(みょうり)に尽きます。ファンの皆さま、ぜひこれから先もオジュウの走りを語り継いでいってください。
オジュウチョウサンに携わっていただいた全ての方に感謝を申し上げたいと思います。ありがとうございました。オジュウ、お疲れさまでした」と感謝を口にした。
また引退後の状況について「オジュウは生まれ故郷の坂東牧場でけい養していただきますが、坂東牧場では種付けを行わず、種付けの設備がある種馬場を探している状況です」と明かした。その上で「私はオジュウの血を残したい、その一心です。オジュウをけい養していただけるという種馬場の方はご連絡をいただければと思います。彼が人気種牡馬となる日が来ることを願ってやみません」と第二の馬生での活躍を祈り、種牡馬場へのスタッドインを希望している。
スポニチ