「ああ、
エピファニーね。これまで1800メートルを使ってきて今回、初めての2200メートル(アメリカJCC=22日、中山)。折り合いの難しい馬だけに距離延長がポイントだけど、これまで強い相手を負かしてきたわけだし、重賞でも十分に足りる器だろうね」
これは目下4連勝中の
エピファニーを管理する宮田調教師のコメント…ではなく、ラ
イバルたる
ノースブリッジの
奥村武調教師のつぶやきである。しかも週明けの火曜でのこと。なんという高度な敵情視察か。記憶力のたまものか、あくなき勝利への執念か。何はともあれ、絶対的に敵には回したくない人物である。
さて、戦いにおいては各方面への情報収集が欠かせないが、自身の把握=適性の見極めが正しくなされていないと話にならない。世間的には「東京巧者」、あるいは「千八巧者」として知られている
ノースブリッジだが、師によると、それは間違いだという。
「この馬のベストパフォーマンスは2歳時の
葉牡丹賞(1着)。横山和も言っていたけど、左回りではコーナーで走りがブレるんだ」と久々の中山はむしろ追い風なんだとか。そして「以前は折り合いに不安を抱えていたので1800〜2000メートルを中心に使ってきたが、控える形で結果を出した
エプソムC(1着)でそれも解消。自在性を手に入れた今なら、2200メートルくらいがちょうどいいのでは」と距離延長もノープロブレムときた。そんなわけで今回の一戦でいよいよ
ノースブリッジの“本性”が明るみに出そうなのである。
ちなみに昨秋2戦の結果はともにオミットできるもの。
毎日王冠(5着)は致命的な出遅れ。続く
天皇賞・秋(11着)は「直前の追い切りが速過ぎたきらいもあるが、そもそもが
グリコーゲン不足。
毎日王冠で出し切ったエネルギーを中2週では補充し切れなかった」。要はデキに問題があったという。
在厩調整ながら3か月のリフレッシュ期間を設けた今回は「反動の度合いが強くなった現代競馬ではある程度の間隔を空けることが肝要で、今回は素晴らしいデキ。とにかく体の切れが半端ない。追い切りを手伝ってもらっている伴も舌を巻くほどだよ」と。確かに冬場にしてはやたらと毛ヅヤが良く、馬体を大きく見せているのも好調の証しだろう。
残す課題はト
リッキーなコースの攻略。もっとも、鞍上は百戦錬磨の岩田康だ。「先週(日曜7Rで
奥村武厩舎の
エイムトゥルーに騎乗して2着した)田辺が言っていたけど、決して内が悪いわけではないのに外差しも利く。要はジョッキーらの思惑ひとつ」と「馬の走力」もさることながら「人の知力」が結果に反映されやすい状況なのだ。そして師いわく「岩田康ほど頭のいいジョッキーはいない」。
そう、まさに鬼に金棒のコンビであり、統括する師も先週2勝を挙げるなど、絶好調だ。
エピファニーの出資者である当方としては…なんともまあ、厄介なヤツらを敵に回してしまったものである。
(美浦の泣きべそ野郎・虎石晃)
東京スポーツ