先週土曜の小倉1Rで
武豊が前人未到の
JRA通算4400勝を達成したのは周知の通り。現役2位の横山典とは約1500勝もの大差。この先どこまで記録を伸ばすのかは分からないが、プロ野球における王貞治の本塁打記録868本や金田正一の通算勝ち星400勝と同様に、今後も並ぶものはない「金字塔」として語り継がれるに違いない。
その他にも歴代最多となる通算18回の
JRA全国リーディング、
日本ダービー6勝などあまたの“伝説”を持つ
武豊だが、彼にとって最後にして最高の勲章として自身も、周囲も期待しているのが仏G1
凱旋門賞の勝利であろう。
実に10回目の挑戦となった2022年の
凱旋門賞には、彼に
日本ダービー6勝目をプレゼントした
ドウデュースとのコンビで参戦。同じくその年のダービー馬と組む形の挑戦だった13年の
キズナでは内国産馬の中で自身最高着順である4着を記録していただけに、期待はいやが応にも高まる状況だったが、結果はブービーの19着。序盤から後方に置かれ、最後は勝ち馬から9秒近く離されての入線という予想だにしないレースに。直前から降り始めた大雨で最悪の馬場状態だったとはいえ、見ている側からすればまったく不可解な惨敗劇となったが…。
「それまでとの環境の違いからか、いつもよりおとなしかったし、走れる感じではなかったですね。負けるはずがないと思っていたニエル賞(4着)でも最後伸びてこなかったし、使った後も想像以上に良くなってこなかったですから。放牧(に出た)と勘違いしていたのかもしれない」
当時を振り返る友道調教師の弁からも、何もかもが
イレギュラーだったと割り切るしかあるまい。ダービーで見せた鬼気迫るような末脚こそが
ドウデュースの真骨頂。本来の姿であれば世界最高峰の舞台でも、あれほど負ける馬ではない。あの信じられない経験を糧に、ひと回り大きくなった姿を見せてくれるはず。そう信じているファンは多いことだろう。
23年逆襲の
ドウデュースは、まずこのGII
京都記念(12日=阪神芝内2200メートル)を
ステップにGI
ドバイターフ(3月25日=メイダン芝1800メートル)へ遠征予定。当然、秋は
凱旋門賞への再挑戦を視野に入れている。
「フランスからの帰国当初は馬体減りもありましたが、すぐに回復しましたし、
ジャパンCも使える感じではあったんだけどね。無理せずにここから使うことにしました」と話すトレーナーの頭には反転攻勢の青写真が完成していることだろう。
1週前追い切りには
武豊がまたがり、ウッドで3頭併せを敢行。かなり後ろからのスタートとなったが、直線で内に潜り込むと鞍上の仕掛けに鋭く反応。楽々と僚馬2頭を一蹴する、さすがの走りを披露した。
ドウデュースとの久々の再会に
武豊は「フランス以来でしたが、元気が良くて相変わらずの動き。(
京都記念を使ってからドバイという)スケジュールを逆算しての調整ですからダービーの時ほど仕上げてはいないけど、悪くはないですよ」と笑顔。その後はダービーで負かした
イクイノックスが
天皇賞・秋、
有馬記念を連勝して「
年度代表馬」に選出されるなど、主役の座を奪われたことを意識して、「こちらもダービー馬のメンツがありますから。今年は
ドウデュースと大きなところを勝ちたいですね」と言葉を続けた。
改めて世界制覇へ向けての第一歩を踏み出す
武豊=
ドウデュースの雄姿は一瞬たりとも見逃せない。
(元広告営業マン野郎・鈴木邦宏)
東京スポーツ