「美浦トレセンの七不思議」の1つとされているのが、
国枝栄調教師が牡馬クラシックと無縁であること。
アパパネ、
アーモンドアイという2頭の3冠牝馬を育て上げたほか、春秋の天皇賞、
ジャパンC、
有馬記念という大レースも制しているのにもかかわらずだ。
しかし、今年こそ国枝調教師の悲願が成就するかもしれない。
ダノンザタイガーが
共同通信杯(12日=東京芝1800メートル)を制すれば、一気に牡馬クラシック戦線の主役に躍り出るからだ。
2020年のセレクトセール(当歳)で3億円に迫る価格で落札されるなど、若駒のころから将来を嘱望されていた
ダノンザタイガー。昨年6月のデビュー戦こそスタートで後手に回って2着に敗れたものの、続く未勝利戦を2馬身差で快勝すると、“出世レース”の
東スポ杯2歳Sでも2着に食い込んだ。国枝調教師がここまでの蹄跡を振り返る。
「一戦ごとに着実にレース内容が良くなってきたよね。前走後は
ホープフルSをはじめいろんな選択肢があったけど、やはり目標はダービーということで広い東京コースの
共同通信杯から始動することにした。適度に間隔を空けながら使ってきたことで、この中間はさらに成長。馬に実が入ったし、落ち着きも出て、心身ともに充実してきた。最終追い切りの後もバタバタすることはなかったし、いい意味で馬に余裕が出てきたよね」
1週前には関西から主戦の
川田将雅が美浦トレセンまで駆けつけて追い切りに騎乗。頼もしきパートナーは「本質的にいい馬ですから、動きを良く見せたり時計も出ますが、乗っている感覚としては“まだ動けていない”。これはいい馬の特徴とも言えるんですけどね。本当に良くなるにはまだ時間が必要な印象ですけど、今回はこの状態でどこまで頑張れるか」とポテンシャルの高さを評価しつつも、まだ良化途上との
ジャッジだったが…。
その点についてもトレーナーは「彼はプロフェッショナルだし、求めるものが高いからね。逆に現時点で完成されていては、来たるクラシックは戦えないでしょう。それくらいのつくり、完成度でいい競馬をしてこそ、これからが楽しみになるというもの」と前向きに受け止めていた。
朝日杯FS3着の
レイベリングや
ホープフルS4着の
ファントムシーフなど、例年以上の好メンバーが顔を揃える今年の
共同通信杯。ここを陣営の言葉通り“完成途上”で勝てるようなら…。美浦トレセンの七不思議が“六不思議”に変わることになるかもしれない。
(美浦のつぶやき野郎・藤井真俊)
東京スポーツ