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“縁の下の力持ち”から主役に駆け上がってほしい小崎綾也騎手

デイリースポーツ
  • 2023年04月03日(月) 16時00分
 記者は昔から“縁の下の力持ち”タイプが好き。野球でたとえるなら、ランナーを返す4番打者より送りバントをする2番打者。競馬なら-。ふと思い浮かんだのが、先日、高松宮記念を制したファストフォース。その1週前追い切りで態勢を整えた小崎綾也騎手(27)=栗東・フリー=は、陰の立役者と言えるだろう。

 調教に乗せる複数の調教師から「真面目、誠実できっかけ一つで花開く」と評されるなど、真摯(しんし)な姿勢で信頼が厚い10年目のジョッキー。デビューした2014年、初勝利から6週連続VのJRA記録を築き、5年目の2018年には函館2歳Sで重賞初制覇を飾った。はた目には一歩ずつ順調…と思いきや、翌年からは年間1桁勝利に甘んじることに。本人も悔しさをにじませるが、その下降曲線も今年で底を打ったとみたい。比類なき挑戦を糧に今、はい上がろうとしている。

 一番の武器は、唯一無二の経験だ。昨年7月から11月まで約5カ月間、単身アイルランドに渡って研修を行った。オーストラリア、ニュージーランドに続く3カ国目の武者修行となった。現地ではトップトレーナーのジョセフ・オブライエン調教師に師事。厩務員に準備してもらった馬にまたがることが多い日本での調教とは違い、馬装から全て自分でやらなければならなかった。競馬開催日は「雰囲気を感じるために」乗り鞍がなくとも片道約200キロの道のりを自ら運転し、カラ競馬場やレパーズタウン競馬場などへ。昨年のアイルランドのリーディング騎手・キーンやフォーリーらと馬場を歩き、見聞を広めたという。

 ジョセフ・オブライエン厩舎で主戦騎手を務めるのが、短期免許で2度の来日経験がある名手・マクドノーやクロース、マクモナグル。世界の大レースを制したトップジョッキーらと腕を磨いた。「向こうの騎手は若い頃からコースでポニーに乗ってきて、下地がしっかりしている。調教だけでも、いいジョッキーたちとしっかり併せ馬をしたりとか、普段から一緒に乗っていると無意識に近づけて乗ろうとするんです。調教でも、レースでも。周りがそうだと変わりますね」。4カ月間の遠征でレースに騎乗できたのはわずか8鞍のみだったが、「経験に勝るものはないので」と確かな手応えを得て帰国した。

 個人的に、印象深いエピソードがある。G1初騎乗だった21年11月のマイルCSでのこと。「(初騎乗だと)書かないでください」とお願いされたことを覚えている。1年以上がたった今、本人に真意を聞いた。「8年目なのにまだG1に乗っていなくて、“ダサッ”と思って」。当時は恥ずかしさのあまりそんな言葉が口をついたが、着実にステップアップを続ける今は違う。

 昨年11月末に帰国してからはニューモニュメントでオープン(ポルックスS)を制すと、続く川崎記念ウシュバテソーロの3着。Jpn1ではあるが、大きなレースに騎乗する機会に恵まれた。「やっぱり楽しいですね。今年は楽しみですよ。(G1に乗るのは)何勝の重みにも変えられません」と明るい表情だ。努力は必ずしも報われないが、努力した者にしか見えない景色はある。今年こそ、その絶景をつかみ取ってほしい。(デイリースポーツ・山本裕貴)

提供:デイリースポーツ

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